犬がくしゃみをしている…考えられる疾患とは?
コラム
犬がくしゃみをしていると「何かの病気かもしれない」と心配になることがありますよね。
犬はホコリや砂などの異物が鼻に入ると、粘膜が刺激されて反射的にくしゃみをします。これは自然な反応であり、通常は心配する必要はありません。
しかし、くしゃみが頻繁に続く場合や、他の症状が見られる場合は、アレルギー性鼻炎や感染症、鼻腔内の異物が原因である可能性も考えられるため、注意が必要です。
今回は、犬のくしゃみの特徴や考えられる原因、そして適切な治療法について詳しく解説していきます。
■目次
1.犬のくしゃみの一般的な特徴
2.犬のくしゃみの原因として考えられる主な疾患
3.各疾患の詳細
4.くしゃみが見られる際の対処法
5.くしゃみの予防法
6.まとめ
【犬のくしゃみの一般的な特徴】
犬の正常なくしゃみは、ホコリや砂が鼻に入ったときや強い匂いを嗅いだときに起こり、頻度はそれほど多くありません。
しかし、アレルギーや鼻腔内腫瘍、感染症などが原因で異常なくしゃみが起こる場合は、頻繁に見られ、一日中続くこともあります。これは、病気によって鼻腔内の粘膜が刺激され、くしゃみのトリガーになっているためです。
異常なくしゃみの場合、黄色っぽい鼻水やサラサラした鼻水が混じることが多く、また感染症やアレルギーが原因の場合には、咳や目やにが同時に見られることもあります。そのため、くしゃみ以外にも症状が出ていないか注意して観察することが大切です。
さらに、逆くしゃみ(喉の奥が刺激されて強い吸気を伴う発作的な呼吸)や短い咳は、くしゃみと間違えやすい症状です。
くしゃみの特徴は勢いよく空気を吐き出す動作ですので、その点を見分けのポイントにしてください。
【犬のくしゃみの原因として考えられる主な疾患】
犬がくしゃみをする原因として考えられる要因や疾患は、以下のようなものがあります。
・環境要因:花粉、ホコリ、ダニなどのアレルゲン、香水や煙といった刺激物
・感染症:犬の伝染性呼吸器症候群(CIRDC)、真菌感染など
・鼻腔内異物
・鼻腔内腫瘍:腺癌、扁平上皮癌、血管肉腫など
・歯科疾患:歯周病、歯根膿瘍など
【各疾患の詳細】
<環境要因>
花粉やホコリ、ダニなどのアレルゲンや、香水や煙などの刺激物が原因で、鼻の粘膜が刺激され、くしゃみが出ることがあります。この場合、くしゃみ以外にも咳や鼻水、涙が見られることがあります。
診断は、他のくしゃみの原因を除外した後に、アレルゲンや刺激物を家から取り除き、症状が改善するかどうかで判断します。なお、現在は血液検査によるアレルギー検査は推奨されていません。
治療は、環境の改善や抗アレルギー薬の処方を行うことが一般的です。
<感染症>
犬の伝染性呼吸器症候群(CIRDC:以前はケンネルコフと呼ばれていたもの)、真菌感染、パラインフルエンザウイルス、犬アデノウイルスII型、犬呼吸器コロナウイルスなど、さまざまな病原体に感染すると、人の風邪と同様に咳やくしゃみが出ます。
特に、免疫がまだ十分に発達していない子犬に多く見られます。
診断は、身体検査やレントゲン検査を行い、子犬であることを考慮して推定診断が行われます。真菌が原因の場合は、鼻水などの分泌物から真菌が検出されることで確定診断が可能なこともあります。
治療は、ウイルスに対して有効な抗ウイルス薬がないため、主に対症療法が行われます。
一方、真菌に対しては有効な抗真菌薬が使用されます。抗生剤はウイルスや真菌には効果がありませんが、細菌の二次感染を防ぐために処方されることがあります。
<鼻腔内異物や鼻腔内腫瘍>
草や枝、植物の種などが鼻に入り込むと、粘膜が刺激されてくしゃみが出ることがあります。特に、突然強いくしゃみが止まらなくなる場合は、異物が原因である可能性が高いです。
また、鼻腔内に腫瘍ができることもあり、これらは悪性であることが多いです。腫瘍が原因の場合、くしゃみだけでなく、鼻水や鼻血、鼻の腫れといった症状が現れることがあります。
診断は、身体検査やレントゲン検査、病理検査などを通じて行われます。
治療は、異物が原因の場合、内視鏡や外科手術で異物を取り除きます。
腫瘍の場合は、手術や放射線治療、抗がん剤治療など、症状や進行状況、発生部位に応じた治療を行います。
▼鼻腔内腫瘤状病変についてはこちら
<歯科疾患>
歯周病や歯根膿瘍が進行すると、上顎の周りの骨が溶けて、鼻の穴と口の中が貫通し、鼻と口が繋がってしまうことがあります。この状態になると、口の中の細菌が鼻に入り込み、くしゃみや鼻水、鼻出血が見られるようになります。 また、強い口臭が出ることが特徴です。
さらに、歯の痛みや歯のぐらつきが原因で、食欲が低下することもあります。
診断は主に口の中を観察することで行いますが、骨の破壊や吸収具合を確認するために、レントゲン検査も必要です。
治療は、口腔内の清掃やスケーリング、ぐらついている歯の抜歯、抗生剤の投与を行います。
▼歯周病についてはこちら
【くしゃみが見られる際の対処法】
犬がくしゃみをしているのを見かけたら、まずはその様子をよく観察しましょう。生理現象としてのくしゃみであれば、通常1、2回でおさまります。
しかし、くしゃみが頻繁に続いていたり、鼻水に血が混じっていたり、鼻や顔の周りが腫れている場合は、何らかの病気が原因である可能性が高いです。このような場合は、早めに獣医師の診察を受けることをおすすめします。
【くしゃみの予防法】
くしゃみを予防するためには、普段からワクチンを接種してウイルス性感染症を防ぐことや、歯周病や鼻腔内腫瘍、アレルギー性鼻炎などを早期に発見するために定期的な健康診断を受けることが大切です。
特にシニア期に入ると、歯周病や鼻腔内の腫瘍が発生しやすくなるため、最低でも半年に一度は健康診断を受けるようにしましょう。
また、不衛生な環境や乾燥した空気は感染症やアレルギーの発症リスクを高めるため、日頃から生活環境を清潔に保ち、湿度は50%程度を維持することを心がけてください。
【まとめ】
くしゃみは生理現象として見られることもありますが、アレルギー性鼻炎や呼吸器系の感染症、鼻腔内腫瘍、歯周病など、さまざまな病気が隠れている可能性もあります。
これらの病気は早期発見と早期治療が大切です。
もし、犬が頻繁にくしゃみをしているようであれば、どうぞお早めに当院にご相談ください。愛犬の健康を守るため、私たちがサポートいたします。
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