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膝蓋骨脱臼

整形外科

【病態】

膝蓋骨脱臼(通称:パテラ)とは、膝のお皿である膝蓋骨が何らかの原因で正常な位置から外れてしまう状態を指します。

特に小型犬の整形疾患の中で最も多く、ペット保険のアニコム損害保険株式会社が2019年に実施した調査では人気犬種であるトイ・プードルの有病率(その病気を持っている割合)は14.4%にも上ると報告されています。

 

膝蓋骨は靭帯や腱によって後ろ足の動きと連動しており、膝を曲げたり伸ばしたりする時に、筋肉の収縮を脛の骨に正しく伝えるための滑車の役割を果たしています。

膝蓋骨は大腿骨の滑車溝という溝の中に収まっており、この溝を上下に滑らかに移動します。しかし、この溝の深さが遺伝的に浅いと、少しの動きで膝蓋骨が脱臼してしまうのです。

 

膝蓋骨が脱臼すると、それに連動する靭帯と腱が引っ張られることで、大腿骨や脛骨に捻れが生じます。これが原因で、大腿骨と脛骨を連結している前十字靭帯や後十字靭帯などにも大きな負荷がかかり、最終的には歩行異常、関節炎、さらには前十字靭帯断裂など深刻な問題へと発展する恐れがあります。

 

膝蓋骨脱臼には、膝蓋骨が身体の内側方向に外れる「内方脱臼」と外側に外れる「外方脱臼」の二種類があり、一般に小型犬は内方脱臼、中〜大型犬は外方脱臼が多いとされています。

小型犬の好発犬種はトイ・プードル、チワワ、ポメラニアン、ヨークシャー・テリア、ミニチュア・シュナウザーなどがあります。

 

また、アニコム損害保険の調査からは、膝蓋骨脱臼の背景には遺伝的素因が強く影響することが明らかにされており、特にトイ・プードルでは膝蓋骨脱臼を発症した兄弟犬がいる場合、そうでない場合に比べて発症リスクが16.2倍も高くなることが報告されています。

 

【症状】

犬の膝蓋骨脱臼には重症度に応じて4つのグレードに分けられます。

 

<グレード1>

膝蓋骨は滑車溝に収まっていますが、手で強く膝蓋骨を押すと脱臼する状態です。

明らかな症状は認めませんが、ごく稀に膝蓋骨が脱臼した瞬間にキャンと鳴いたり、一時的に足を気にする様子などが見られたりします。

 

<グレード2>

膝蓋骨が不安定で日常生活中に脱臼したり正常な位置に戻ったりを繰り返している状態です。脱臼していても手で簡単に正常な位置に戻せます。

脱臼中はケンケン歩きをしたり、寝起き時に後ろ足を気にして挙げたり伸ばしたりする様子が見られます。

 

<グレード3>

膝蓋骨は常に脱臼しており、指で押すと正常な位置に戻りますが、またすぐに脱臼してしまう状態です。グレード2同様に、ケンケン歩きをするなどの様子が見られます。

また大腿骨や脛骨の変形、関節炎などが生じると日常的に痛みを感じ、散歩に行きたがらない、長い距離を歩けないといった様子が見られます。

 

<グレード4>

膝蓋骨は常に脱臼しており、手で正常な位置に戻せない状態です。

グレード3の症状に加えて、大腿骨や脛骨の変形が重度になり後ろ足を伸ばせない様子などが見られます。

 

【診断・治療】

膝蓋骨脱臼が疑われる場合は身体検査(整形学的検査や跛行検査)で重症度を評価し、レントゲン検査で膝関節の状態を確認します。中でも、レントゲン検査は手術の計画を立てるための詳細な計測に必要な検査です。

 

跛行検査:院内で歩行の様子を確認する

整形学的検査:獣医師が実際に身体に触って骨や膝蓋骨、筋肉、靭帯などの状態を確認する

レントゲン検査:膝関節の状態を評価する

 

膝蓋骨脱臼の治療は、症状の重症度や犬の健康状態に基づいて決定し、保存療法外科手術を選択していきます。

グレード1や一部のグレード2の症例では、体重管理、関節炎予防のサプリメントや抗炎症剤、鎮痛剤の内服、自宅の床を滑りにくくするなどの環境整備などの保存療法を行うことがあります。

 

一方で、グレード3以上の症例では手術が推奨されます。手術法にはいくつかの種類があり、膝蓋骨脱臼のグレード、膝関節の状況や年齢など様々な要因を考慮して最も適切な方法が選ばれます。

主な膝蓋骨折脱臼の手術法は以下の通りです。

 

<滑車溝造溝術>

先天的に浅い滑車溝を深く掘ることで膝蓋骨の安定性を確保します。

 

<関節包縫縮術>

膝関節を包む関節包という組織をきつく縫い縮めることで、膝蓋骨を正しい膝関節構造の位置へ整復します。

 

<脛骨粗面転移術>

 脛骨粗面を切断して適切な位置に移動させて、大腿骨と脛骨の位置関係を整復します。

 

そして手術後は、リハビリテーションや特別なケアが必要になります。

 

【予後】

膝蓋骨脱臼は、愛犬の生活の質に深刻な影響を及ぼす可能性がある疾患ですが、早期に発見し適切な治療を施すことで、手術を回避できる場合もあります

もしグレードが進行していた場合でも、適切な手術を行うことで今までのように歩行できるようになる可能性も高くなります。そのため、ご家庭では散歩時の様子や歩き方を注意深く観察し、何か異変を感じたらすぐに獣医師に相談してください。

 

<参考資料>

*J Vet Med Sci. 2019 Apr 16;81(4):532-537 doi: 10.1292/jvms.18-0485. Epub 2019 Feb 12.

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