麻酔ってこわい?
スタッフブログコラム
暑い日が多くなってきましたね。
我が家の猫2匹も昼間はもうぐでんぐでんで床にねそべっています。
いくらクーラーがあってもやっぱり暑いんだなぁと毎日実感します。
こんにちは、院長の中森です。
今日はちょっと真面目な話をしようと思います。
★全身麻酔について★
先日、わんちゃんの避妊手術を相談しに来院された飼い主さんに
『ここで(避妊手術)やっていただけるんですか?』と尋ねられる出来事がありました。
もちろんです。
当院では、全身麻酔下での手術や処置に対応しております。
昨年度は全身麻酔をかけての処置は年間350件ほどでした。
その中で、健康な動物たちに処置する去勢や避妊手術は220件ほど。
それ以外には、歯周病から腫瘍や骨折に至るまで、異常のある動物たちにも手術を実施しています。
膝蓋骨脱臼整復術(造溝術+脛骨粗面転位術)
橈尺骨遠位骨折整復術(ロッキングプレート固定→後日プレート抜去)
動脈管結紮術(心臓から出る肺動脈と大動脈に短絡する動脈管という血管を縛っています)
何でもかんでも手術するわけでなく、いくつかの選択肢を飼い主さんと相談の上で、
結果として手術が選択されるのですが、やはり
『麻酔が心配で・・・』
と飼い主さんからよくお声をいただきます。
もちろんですよね。不安を感じて当たり前だと思います。
確かに全身麻酔には確実にリスクが存在します。
100%安全なものではありません。
ただ、過剰なほどに不安に感じるものではないと私は考えています。
当院では全身麻酔は主に
鎮痛・鎮静・筋弛緩を満たせるようにいくつかの薬を併用して実施します。
例えば注射で鎮静剤や鎮痛剤を投与した後、
気管にチューブを入れて吸入麻酔薬を投与しながら寝ている状態を維持します。
麻酔薬を投与すれば、当然人と同様に動物たちも眠りに落ちます。
なぜ多くの飼い主さんたちは全身麻酔を不安に感じるのでしょうか?
100%安全ではないからでしょうか?
これも一つの答えでしょう。
たとえ0.01%でも麻酔で死亡するリスクがあれば不安に感じるのは当然です。
ではこのリスクを少しでも軽減するために、
どうしたらより安全に全身麻酔が実施できるのでしょうか?
最新の麻酔器があればよいでしょうか?
高価な生体モニターがあればよいでしょうか?
もちろん設備はあって困るものでもありませんし(お金はかかりますが・・・)、あるにこしたことはないでしょう。
リスク軽減の為に、当たり前のようですが、当院では以下の項目が重要だと考えています。
1. 動物ごとの術前の全身状態を把握すること
2. 実施する処置や手術に応じた適切な薬を選択すること
3. 麻酔管理中の異常をできるだけ早く把握し、適切な対処をすること
2と3は勉強すればなんとかなります。
どんな病気の子はどの薬を使用するべきでないか。
術中の心拍数や血圧が低下してしまった時に、どのような対応をすればよいか。
全て教科書や参考書にかいてあります。
慌てずに対応することが大事でしょう。
術前の全身状態を把握する
獣医師と動物たちとの間には、大きな言葉の壁がどうしても存在します。
そのため、この全身状態を把握することは簡単に言うようですがとても困難です。
この大きな言葉の壁を乗り越えて、動物の術前の全身状態をできるだけ正確に評価するためには、
術前の検査がなにより不可欠だと思います。
飼い主さんの問診や動物の確認(手術するべき箇所は右か左かなど)から始まり、
麻酔薬を分解・排泄する肝臓や腎臓機能を調べるために血液検査や、
心肺機能を調べるためにレントゲン検査など。
これらの検査結果から、術前の全身状態を5段階(もしくは6段階)に評価し、
獣医師・動物看護師がチームとして全身麻酔に従事します。
危ない状態の動物を危ないものとして意識することが、重大な危機の早期発見に役立つと考えられています。
このリスク分類のもとに、術中や術後の死亡率がどれぐらいある処置をするのかを飼い主さんと相談します。
リスク分類表
なぜ多くの飼い主さんたちは全身麻酔を不安に感じるのでしょうか?
きっと、
全身麻酔についてよく知らないし、なんとなく恐い
という方も多くいらっしゃるのではないかと思います。
もちろん、過去につらい経験をしてしまって不安なイメージがついてしまった方もいらっしゃるのは間違いありません。
ただ、このブログを見て少しでも全身麻酔について正しい知識を持っていただき、
家族の一員としての動物たちに少しでも治療の選択肢が増えることを心から願っています。
ご家族が安心して動物たちを預けていただけるよう、これからも精進してまいります。
――――飼い主さんと動物たちのえがおのために――――
京都府長岡京市
乙訓どうぶつ病院
~乙訓地域(長岡京市、向日市、大山崎町)、大原野、伏見、久御山、島本町~