発生頻度の多い皮膚科疾患 ~ Part.1 膿皮症 ~
スタッフブログ
こんにちは、獣医師の加藤です。
だんだん肌寒くなってきて夏の終わりを感じます。また、湿度も下がってきて、わたしは皮膚の乾燥が気になってきました。
みなさんにとっても皮膚は毎日目にしたり触れたりするという点で、最も身近な臓器ではないでしょうか。
今日はそんな皮膚の役割と病気について、少しお話してみたいなと思います。
皮膚はその第一の役割として、外界から体を守ってくれています。
皮膚を覆う表皮細胞というレンガの壁のような積み重なった構造(下の図では「上皮細胞の層と基底膜」)が、
お互いにしっかりくっつき合っていて、外からの異物の侵入を防ぐと同時に、
からだの中の物質がかんたんに流出しないようにしてくれています。
そしてもし侵入されても対処できるように、
からだの防衛を担当する細胞たち(下の図では「ランゲルハンス細胞」と「リンパ球」)がいつも待機してくれています。

日ごろあまり気にならないかもしれませんが、外界から生体に与えられる刺激は多く、例えば、紫外線、熱、乾燥、
わたしたちの生活に欠かせない化学物質への暴露や、微生物の侵入などがあります。
これらに対して脅威を感じることなく生活できるのは、皮膚がお家の壁のように「私」を強固に守ってくれているからですよね。
でも、この皮膚のバリアが弱くなって、例えば微生物が侵入したら一体どうなってしまうのでしょうか?
夏の時期におけるわんちゃんの皮膚科疾患でよく遭遇するもののひとつは、「膿皮症」でした。つまり細菌による皮膚炎です。
細菌は「私」とは違うもの、つまり異物であり、「私」に入れば侵入者です。
わたしたちは体の恒常性を保つために侵入者を体から排除しなくてはなりません。
排除のための戦争が「炎症」で、防衛するのは「炎症細胞」と呼ばれる細胞たちです。
地上における戦争が周囲の環境を破壊するように、炎症も周囲の組織を破壊しますから「痛い」です。
体は炎症細胞をたくさん戦場に運ぼうとするので、血管から血液成分が出てきて「腫れ」たり、
「赤く」なったり、「熱く」なったりします。
炎症細胞たちが戦って死んだものが「膿」です。


皮膚が赤く腫れたり(上)、膿んだり(下)しています。
膿んでいるところを検査するとこのように「細菌たち」と防衛する「炎症細胞」がたくさん検出されます。

これらが膿皮症の症状です。
病院ではこれらの症状を改善するために、
炎症細胞に代わって細菌を殺すお薬や、必要であれば過剰な炎症反応を抑えるお薬を使います。
病原性のさほど高くない細菌(膿皮症の原因菌のほとんどはブドウ球菌や大腸菌です)で、その侵入が少量であり、かつ健康な子ならば、
体の防衛反応だけで完全に体から排除できるはずです。
でも、もともと皮膚のバリア機能が弱い子―例えばアトピー性皮膚炎がある子や、ほかの原因による皮膚疾患がある場合には、
外界にはどこにでもいる細菌たちに(じつは細菌だけではなくカビにも)繰り返し容易に侵入されたり、
体から排除することができなくなってしまいます。
それでは、この細菌による皮膚炎を防ぐためには何をしたら良いのでしょうか?
まず、直接的な原因である細菌を減らすことが大切ですよね。
具体的にはシャンプーで体をきれいに保ってあげること。
次に皮膚のバリア機能を高めてあげることも必要です。
乾燥しているならば保湿をする、皮脂が出過ぎているなら適度に取り除く、
ほかの皮膚疾患に罹患しているならばその治療も同時にするなどが挙げられると思います。
さて、皮膚における防御以外の役割としては、魅力の発信というものもあります。
例を挙げてみると、発情期における鳥の飾り羽、わんちゃんやねこちゃんでは被毛や毛色、ヒトでは髪型や肌の色に相当するかもしれませんね。
でもこれらの表現は、すべて皮膚が健康であることで成り立っています。
わたしも自己満足なりに、表現し得る最大限の魅力を表現しようと、出産以来ずっと乾燥気味の肌を保湿しなくては…と思いながら、
お風呂あがりになにもケアせず子供と寝落ちする毎日です。
――――飼い主さんと動物たちのえがおのために――――
京都府長岡京市
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