犬や猫の異常な呼吸 |緊急性のある7つの症状と対処法について
コラム
愛犬や愛猫の呼吸に異変が見られると、どのように対応すべきか悩むことがあるかもしれません。呼吸の様子がいつもと違うと、健康に関わるサインである可能性も考えられます。
今回は、愛犬や愛猫の正常な呼吸と異常な呼吸の見分け方、そして適切な対応について分かりやすく解説します。
呼吸困難の原因や、いざというときの対応方法、日々のケアで呼吸器の健康を保つポイントもご紹介します。
■目次
1.愛犬・愛猫の正常な呼吸とは
2.呼吸困難を引き起こす可能性のある主な疾患
3.呼吸困難のサイン|緊急性の高い7つの症状
4.緊急時の対応|飼い主様ができること
5.動物病院への相談・受診のタイミング
6.予防と日頃のケア
7.まとめ
【愛犬・愛猫の正常な呼吸とは】
愛犬や愛猫の呼吸が正常かどうかを判断するためには、普段の呼吸の様子を知っておくことが大切です。まずは、犬と猫の正常な呼吸数を覚えておきましょう。
・犬の正常な呼吸数:安静時で1分間に20〜34回(睡眠時は30回以下)が一般的です。
・猫の正常な呼吸数:安静時で1分間に20〜40回(睡眠時は30回以下)が一般的です。
呼吸数は、愛犬や愛猫が寝ているときやリラックスしているときに、胸やお腹の動きを観察して数えましょう。
正常な呼吸では、胸やお腹がゆっくりと規則正しく動き、鼻で静かに息をしているのが見られます。口を閉じて落ち着いて呼吸しているのが通常の状態です。
一方で、呼吸のリズムが速すぎたり浅すぎたりする、呼吸が苦しそうに見える、口を開けて肩で息をしているような場合は、何らかの異常があるかもしれません。
また、胸やお腹の動きが異常に大きかったり小さかったり、呼吸時に「ゼーゼー」「ガーガー」「ヒューヒュー」といった音がする場合も、異常のサインです。
【呼吸困難を引き起こす可能性のある主な疾患】
呼吸困難を引き起こす原因はいくつかありますが、以下のような疾患が代表的です。
・気管虚脱:特に小型犬に多く見られる病気で、気管が潰れてしまい呼吸が苦しくなります。咳や異常な呼吸音が特徴です。
・気管支炎や肺炎:ウイルスや細菌、アレルギーなどが原因で気管支や肺が炎症を起こし、呼吸困難や咳の症状が現れることがあります。
・喘息:特に猫に多く見られ、気道が狭くなったり炎症が起きて、呼吸が苦しくなったり咳が出ることがあります。
・心臓病:心臓の機能が低下すると、肺に液体が溜まる(肺水腫)ことがあり、呼吸が苦しくなることがあります。息が荒くなったり、慢性的な咳や息切れが見られることが多いです。
・アナフィラキシーショック:急性のアレルギー反応で、重い呼吸困難や血圧の低下が起こることがあります。治療が遅れると命に関わることがあるため、ワクチン接種後などは特に注意が必要です。
・胸水や気胸:胸腔内に液体や空気が溜まることで肺が圧迫され、呼吸困難を引き起こすことがあります。事故や胸の打撲が原因になることもあります。
【呼吸困難のサイン|緊急性の高い7つの症状】
愛犬や愛猫が呼吸困難に陥った際、飼い主様が特に気をつけていただきたい緊急性の高い7つの症状をご紹介します。これらの症状が見られた場合は、すぐに動物病院にご相談ください。
1.口を開けて呼吸している
犬は運動後や興奮したときに口を開けてパンティング(舌を出してハッハッと息をすること)をしますが、安静時に口を開けて呼吸している場合は呼吸が苦しいサインです。
特に猫の場合、緊急性が高く、心臓病や呼吸器系の重篤な問題が疑われるサインです。
2.呼吸が浅く速い
安静にしているときに「ハッハッ」と浅く速い呼吸をしている場合、十分な酸素を取り込めていない可能性があります。
運動後や暑い日の一時的なものではない場合、肺や心臓の問題が原因となることが多く、注意が必要です。
3.呼吸時に異常な音がする
「ヒューヒュー」「ゼーゼー」「ガーガー」といった異常な呼吸音(喘鳴)が聞こえる場合、気管や気道が狭くなっている可能性があります。この音は、空気が狭くなった気道を通る際に発生します。
4.鼻翼の開きが大きい
呼吸時に鼻の両脇(鼻翼)が大きく開いている場合は、呼吸が苦しく、より多くの酸素を取り込もうとしている状態です。
5.腹式呼吸が顕著
通常は胸で呼吸しますが、腹部を大きく使って呼吸している場合は呼吸器に問題がある可能性が高いです。これは、酸素が十分に取り込めず、腹部の筋肉を使って強く呼吸している状態です。
6.チアノーゼ(粘膜の青白化)
チアノーゼは酸素が十分に体に行き渡っていないときに見られる症状で、歯肉や舌などの粘膜が青白く〜青紫色になる状態です。非常に危険な状態で、緊急対応が必要です。
7.横たわって呼吸している
愛犬や愛猫が横たわったまま動かずに呼吸している場合、呼吸がかなり苦しくなっている可能性があります。また、低酸素によって意識レベルが低下していることもあり、すぐに酸素吸引などの対応が必要です。
【緊急時の対応|飼い主様ができること】
呼吸困難のサインが見られたときは、落ち着いて対応することが大切です。まずは慌てずに愛犬や愛猫の様子を観察し、以下の対応を心がけてください。
<静かな場所で安静にさせる>
愛犬や愛猫が興奮すると、呼吸がさらに苦しくなることがあります。できるだけ静かで落ち着ける環境を整えて、リラックスできるようにしましょう。
<姿勢を調整する>
呼吸を少しでも楽にするために、顎の下に柔らかいタオルやクッションを敷いて、頭を少し高くしてあげるとよいでしょう。
愛犬や愛猫が自然に取る姿勢を尊重し、無理に姿勢を変える必要はありません。ただし、横向きや仰向けの姿勢は肺が圧迫されることがあるため、できるだけ避けましょう。
<室温を調整する>
犬や猫は暑さを感じると呼吸が速くなり、呼吸に負担がかかってしまいます。
室温は23~25℃、湿度は50%程度が理想的です。また、部屋の換気をよくして新鮮な空気を取り入れることも、呼吸を楽にする助けになります。
<動物病院に連絡する>
緊急性が高いと感じた場合は、夜間や休日であってもためらわずに動物病院に相談してください。かかりつけの病院が休みの場合は、近くの動物病院や夜間診療を行っている病院に電話で状況を伝え、すぐに受診できるか確認しましょう。
【動物病院への相談・受診のタイミング】
愛犬や愛猫の呼吸に異常が見られると、どう対応すべきか迷うこともあるかもしれません。しかし、早期の発見と治療が大切です。
呼吸困難が続く、前述のサインが見られる、元気がない、食欲が落ちているなどの症状があれば、すぐに動物病院に連絡して、受診のタイミングを相談しましょう。
少しでも気になることがあれば、ためらわずに獣医師に相談することが、愛犬や愛猫の健康を守る第一歩です。
【予防と日頃のケア】
呼吸器の健康を保つためには、日々のケアも大切です。以下のポイントを心がけて、愛犬や愛猫の健康をサポートしましょう。
<定期健診>
定期的に動物病院で健康診断を受けて、呼吸器や心臓の状態を確認しましょう。
少なくとも年に1回は、血液検査、レントゲン検査、エコー検査などを含めた健康チェックを行うことで、さまざまな病気の予防や早期発見・早期治療につながります。
<空気の換気>
室内の換気や空気清浄機の使用を心がけ、アレルゲンやホコリの除去に努めることも重要です。喫煙は室内で行わないようにし、香水や掃除用スプレーなどの刺激物も控えましょう。
<適度な運動とバランスの取れた食事>
無理のない運動を取り入れて、肥満を防ぎながら呼吸器や心臓を健康に保ちましょう。特に肥満は呼吸器に負担をかけるため注意が必要です。
食事は与えすぎに気をつけ、良質なタンパク質を含むバランスの取れた総合栄養食を選んでください。
<ストレス軽減>
ストレスは呼吸器だけでなく、全身の健康に影響を与えます。愛犬や愛猫がリラックスできる環境を整え、安心して過ごせるように心がけましょう。
【まとめ】
愛犬や愛猫の呼吸に異常が見られる場合、それは健康に関わる大切なサインかもしれません。早めに異常を見つけて適切に対応することで、大切な家族の健康を守り、安心して過ごすことができます。
少しでも気になることがあれば、お気軽に当院にご相談ください。
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