老犬の認知症対策|徘徊や夜鳴き、介護にどう対応する?獣医師が解説
コラム
「最近、愛犬の夜鳴きが増えた」
「グルグルと徘徊して、なんだか落ち着きがないみたい」
長年一緒に暮らしてきた高齢の犬の変化に、飼い主様は強い不安を抱くのではないでしょうか?
このような場合、犬の認知症(認知機能不全)の可能性があります。
ペットの長寿化にともない、全国的にも「認知症」の相談が増えています。
そこで今回は、老犬に見られる初期症状や家庭でできるケアについて、これまでのご相談を踏まえて、分かりやすく解説します。

■目次
1.気になる行動は認知症の初期サイン?
2.徘徊・夜鳴きには理由がある
3.認知症と間違えやすい病気
4.動物病院での検査と診断の流れ
5.家でもできる対策とケア方法
6.進行を遅らせるための医療的サポート
7.まとめ|「あれ?」と思ったら早めに相談を
【気になる行動は認知症の初期サイン?】
犬の認知症は、最初は「なんとなく様子がおかしい」といった小さな違和感から始まることが多いです。よく見られる初期のサインには次のようなものがあります。
✅夜中に理由もなく鳴くようになった
✅部屋の中をぐるぐる歩き回る
✅壁や家具にぶつかることが増えた
✅名前を呼んでも反応が薄い
✅トイレの失敗が増えた
✅昼夜逆転し、日中はぼんやり寝てばかりいる
✅同じ場所で立ち尽くし、動けなくなる
これらは加齢による単なる老化と紛らわしいため、見逃されやすい変化です。
老化は「反応がゆっくりになる」程度のことが多い一方、認知症は生活に支障をきたすような行動変化が特徴です。
▼認知機能不全症候群(症例解説)はこちらで解説しています
【徘徊・夜鳴きには理由がある】
認知症の犬に見られる徘徊や夜鳴きには、行動ごとに背景となる理由があります。
◆ 不安や混乱
記憶力の低下により、自分が今どこにいるのか分からなくなり、不安から歩き回ったり鳴いたりします。
◆ 昼夜逆転
体内時計が乱れ、日中は眠って夜中に活発になることで夜鳴きへとつながることがあります。
◆ 感覚機能の低下
視力や聴力の低下が進行すると、周囲の状況を把握しにくくなり、不安から落ち着きを失うケースがあります。
◆ 体の痛みや疾病
関節痛、内臓疾患、脳の病気など、慢性的な痛みや不調によって落ち着かなくなることもあります。
徘徊や夜鳴きが見られたからといって、ただちに認知症と決めつけることはできません。しかし放置せず、早めに原因を確かめることで改善につながる場合もあります。
【認知症と間違えやすい病気】
また、認知症に似た症状を示す病気もあります。
・腎臓病や肝臓病による意識レベルの低下
・甲状腺機能低下症
・脳腫瘍や脳炎などによる神経症状
・変形性関節症などによる慢性疼痛
・高血圧や心疾患による精神不安定
適切な検査を行うことで、治療の必要な病気が見つかる場合もあります。
▼変形性関節症についてはこちらで解説しています
▼肺高血圧症についてはこちらで解説しています
【動物病院での検査と診断の流れ】
当院では、認知症が疑われる場合、まず飼い主様への丁寧な聞き取りを大切にしています。生活環境、行動の変化、進行スピード、困っていることを伺い、行動評価を行います。
次に血液検査や尿検査で全身状態を確認し、必要に応じて神経学的検査や画像検査(レントゲン・超音波・CT・MRIなど)を提案します。
通常のご来院のほかに、半年に一度の健康診断をご受診いただくことで、認知症に限らず、老化による不調や様々な病気の早期発見につながります。
当院の通称「わんにゃんドック」では、7歳以上を対象にした特別なヘルスチェックのメニューもご用意しています。
長岡京・向日エリアでも高齢犬の相談は年々増えており、「年齢のせい」と見過ごされていた症状が精密検査や健診によって見つかることもあります。
当院は一度の診察で終わらず、かかりつけ医として定期的なフォローを通して生活面から支える診療を大切にしています。
ささいなことでも気軽にご相談いただければと思います。
▼わんにゃんドックについてはこちらです
【家でもできる対策とケア方法】

認知症のケアは毎日の生活から始めることができます。ご自宅でもすぐに実践できるケア方法をご紹介します。
<行動療法|徘徊・夜鳴き対策>
日常生活の中で無理なく取り入れられる対策から始めることで、犬の不安や混乱を和らげやすくなります。
夜鳴き対策としては、朝日を浴びる時間を増やしたり、日中の活動量を少し増やしたりすることで生活リズムの安定が期待できます。
他にも以下のような住環境の見直しも有効です。
・段差や障害物を減らし、安全に歩けるスペースを確保する
・同じ場所をぐるぐる回る場合はサークルやクッションで衝突を防ぐ
・夜はやわらかな照明をつけ、不安を軽減する
<脳の刺激>
認知症の進行を遅らせるためには、日常の中で脳に適度な刺激を与えることが大切です。
散歩は短時間でも継続し外の刺激を受けると良いでしょう。家の中でも嗅覚を使う遊び(ノーズワーク)や知育玩具を取り入れることで、楽しみながら脳の活性化につながります。
また、家族からの声かけやスキンシップは安心感を与えるだけでなく、心のケアとしても効果が期待できます。
<食事の見直し>
食事の見直しは、認知症の進行予防に役立つ取り組みのひとつです。
MCTオイル(中鎖脂肪酸)やDHA/EPAを含む食事は脳の働きを支えることが報告されています。栄養バランスを整えることは体力維持にもつながるため、食事ケアは早めに始めることがおすすめです。
高齢犬用の療法食へ移行したい場合は、体調や持病に合わせて選ぶ必要がありますので、動物病院に一度ご相談ください。
【進行を遅らせるための医療的サポート】
病院でできるサポートとしては、定期的なフォローにくわえ、症状の進行を遅らせる内服薬やサプリメントの活用があります。
また、不安を和らげる薬の併用により夜鳴きや徘徊が改善することもあります。
認知症はゆっくりと進行する病気ですが、早期から環境調整やケアを始めることで生活の安定につながり、穏やかに過ごせる時間を守ることができます。
当院では犬のデイサービス「シニアケア」やご家族向けの「シニアセミナー」などを通じて、高齢犬とそのご家族の暮らしを支える取り組みを続けてきました。
長く向き合う介護だからこそ、頑張りすぎず外部のサポートも活用していきましょう。
【まとめ|「あれ?」と思ったら早めに相談を】
気になる行動が見られた場合、「年齢のせい」と決めつけず、早めに状況を確認してあげることが大切です。
認知症は進行性の変化ですが、適切なケアにより愛犬の健康と生活の質(QOL)を保てるケースも少なくありません。
介護はご家族だけで抱え込まず、必要に応じてプロのサポートを取り入れながら進めていきましょう。
行動の変化に困ったとき、対処法に迷ったときは、一度動物病院に相談してみてください。
長岡京・向日エリアで高齢犬の介護や夜鳴き・徘徊、認知症の疑いでお悩みの場合は、お気軽に当院までご相談ください。
飼い主さんと動物たちのえがおのために
京都府長岡京市「乙訓どうぶつ病院」
~乙訓地域(長岡京市、向日市、大山崎町)、大原野、伏見、久御山、島本町~
診療案内はこちら







