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気管・気管支軟化症

呼吸器科

【病態】

気管・気管支軟化症とは、息を吐く時(呼気時)に気管が潰れてしまう疾患で、持続的な咳や異常な呼吸音を特徴とします。

気管が潰れてしまう病態を「気管虚脱」と言いますが、気管・気管支軟化症はそのうちの一つです。

原因は、慢性気管支炎などの末梢気道病変や、心拡大・肥満など肺の拡張制限を引き起こす疾患により二次的に発生します。
このような状態では、息を吐く時に気管の外からの圧力が気管内圧を上回ることで、気管が潰れてしまうのです。

この病気は、ヨークシャー・テリア、ポメラニアン、チワワ、トイ・プードルなどの小型犬に多く見られ、若い犬から中年の犬にかけて発症しやすいです。一方で、猫では非常にまれです。

 

【症状】

気管・気管支軟化症の初期段階では、ほとんど症状が現れず、激しい運動や興奮したときに軽い咳が出る程度です。
しかし、病気が進行し、気管が大きく潰れるようになると、慢性的に咳が出る、息を吐く時に胸を大きく動かしたり(呼気努力)「ヒューヒュー」「ゼーゼー」といった異常な呼吸音が聞こえるなどの症状が出ます。

さらに進行すると、呼吸が困難になり、チアノーゼ(皮膚や粘膜が青紫色になる状態)が現れることもあります。特に、興奮時や暑い環境での浅く早い呼吸(パンティング)などで悪化するため、注意が必要です。

 

【診断・治療】

気管・気管支軟化症の診断は、身体検査で呼気努力や異常呼吸音を確認した上で、胸部X線検査で気管の太さを確認します。
具体的には、息を吸ったときの気管の太さと、息を吐いたときの気管の太さを比較して、吐いたときに太さが半分以下になっていれば、気管・気管支軟化症と診断されます。

また、内視鏡を使って気管の状態を直接確認し、虚脱の原因を詳しく調べることもあります。

治療としては、原因となる基礎疾患を特定し、それに対する治療を行うことが必要となります。また、並行して呼吸状態の安定化も行います。
苦しそうな息づかいで熱感を伴うような場合には体を冷やし、気管支拡張剤や咳を抑える鎮咳薬、気道の炎症を抑える抗炎症薬などを使用します。

 

【予後】

気管・気管支軟化症は、原因となる基礎疾患を治療できれば改善すると考えられます。しかし、進行すると呼吸困難などの重い症状が現れ、最悪の場合は命に関わることもあるため、早期に原因疾患を治療する必要があります。

また、呼気障害により体の表面が熱くなると、それ自体が症状悪化に繋がるため、徹底して体を冷ますことが重要です。周囲温度を20~23℃に保ち、扇風機やうちわなどで風を当てるなどして応急処置を行うとともに、すぐに動物病院へ連絡してください。

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