尿路結石症
泌尿器科
【病態】
尿路結石症とは文字通り、腎臓、尿管、膀胱、尿道といった尿路に結石が生じる病気です。
結石ができると排尿時に痛みが出たり、結石が詰まって排尿ができなくなると急性腎不全になり、尿毒症という命にかかわる状態になってしまう危険もあります。
尿路結石が発生する原因は複数ありますが、ミネラル分が多い食事の過剰摂取、飲水量の不足、排尿を我慢してしまう環境、遺伝的素因、尿路系の感染などが関与しています。
また、形成される結石にはいくつかの種類があり、主に以下の3種類が臨床的に重要です。
①ストラバイト結石(リン酸アンモニウムマグネシウム)
よくみられる尿中結晶のうちの1つで、アルカリ性尿で頻発します。
犬では細菌感染が大きく関与し、猫では細菌感染がなくても形成されます。治療により尿を酸性化することで溶かすことが可能です。
②シュウ酸カルシウム結石
酸性尿で頻発し、エチレングリコール中毒 (主に不凍液の誤食)でもみられます。
療法食により溶かせないため、外科手術で取り除く必要があります。
③尿酸アンモニウム
犬において遺伝性に起こりやすい結石だとされています。特に、ダルメシアンとブルドッグは好発犬種です。重度の肝不全や、門脈体循環シャント(PSS)という病気でもみられます。
【症状】
尿路結石症では膀胱炎を引き起こすことが多いので、主な症状は血尿や頻尿、排尿時の痛み (排尿時に苦しそうに鳴く、排尿の姿勢を取っても尿が出ない)、いつもと違う場所で排尿をする、などが挙げられます。
結石によって排尿が完全にできなくなると 、急性腎不全となりグッタリして元気や食欲が低下したり、嘔吐などの症状が見られたりすることもあります。場合によっては膀胱や尿道が破裂することもあります。
【診断・治療】
尿路結石の診断は、まず飼い主様に問診を行うことから始まります。
血尿や頻尿、排尿時の様子に異常があるといった情報が得られれば、尿路結石症を疑って下記の検査に進みます。
・尿検査
飼い主様に持参していただいた尿や院内で採取した尿を検査します。尿の比重やpH、血尿・結晶・結石の有無などを調べます。
・レントゲン検査
腎臓から尿の出口までの間に結石がないか調べます。結石があればレントゲン上で白く映りますが、結石が小さい場合は映らないこともあります。
・腹部エコー検査
腎臓や膀胱内部の状態や尿管内に結石がないか評価します。小さい結石でも発見することができるため、非常に有効な検査法です。
全身状態や腎臓のダメージを評価するために血液検査を行うこともあります。
治療は、尿路結石の原因を根本的に解決する必要があります。
結石の成分によって治療や経過観察の方法が変わるため、それぞれ紹介していきます。
①ストラバイト結石(リン酸アンモニウムマグネシウム)
ストルバイト結晶は、療法食で尿のpHをアルカリから中性へと下げることで溶解します。
そのため、療法食が食べられる、結石が巨大ではない、細菌尿がない、という条件が合えば、療法食で膀胱結石を溶かします。
②シュウ酸カルシウム結石
結石の成分がシュウ酸カルシウムの場合には、療法食により溶かすことはできません。
自然に体外に出てくるまで経過観察するか、外科手術によって摘出し、尿石が新たにできないように療法食で維持していきます。
③尿酸アンモニウム
肝不全が原因の場合は、肝不全の治療を行います。治療が難しい肝不全や遺伝が原因の場合は、高い確率で再発します。
原因や状態にもよりますが、療法食による食事療法や体内で尿酸が作られるのを抑える薬の投与などでコントロールしていきます。
【予後】
尿路結石症は一度発生すると、中々改善しなかったり再発を繰り返したりすることが多い厄介な病気です。
なお、結石を放置すると、体内でどんどん大きくなり最終的に尿の通り道が塞がってしまいます。尿の通り道が完全に塞がると、急性腎不全や尿毒症を引き起こし命を落とすこともあるため注意が必要です。
普段の生活の中で尿石症にならないように予防する方法としては、水分をたくさん取り、頻繁に排尿することで膀胱の中を常に洗い流し、尿石ができにくい状態を保つことが重要です。
そのためにまずはお水を飲みやすい環境を整えることが大切です。例えば、設置個所を増やす、ぬるま湯にしてみる、流れる水が好きな子の場合には自動給水機を設置してみるのもいいでしょう。
【まとめ】
犬と猫の尿路結石症は決して珍しい病気ではなく、全ての犬と猫で発症する可能性があります。血尿や頻尿、排尿時の様子の異変などに気づいたら、様子を見ずにすぐに動物病院を受診してください。
また、食事療法の指示が出た場合は必ず獣医師の指示に従うようにしましょう。
生涯を通して療法食を食べさせる必要があることも多く、長い目で病気と付き合うことが大切です。