猫喘息
呼吸器科
【病態】
猫喘息とは人の喘息と同じように、咳や呼吸困難、喘鳴音などを示す慢性気管支疾患です。
気道がアレルギー反応を示す何らかのアレルゲンに過剰に反応してしまい、気道が腫れて内腔が狭くなったり、気道粘膜が炎症を起こしたりすることで様々な症状が発生します。
また、喘息を持つ猫の気道は症状がないときでも常に軽い炎症をおこしているか、炎症がおこりやすい状態になっています。そこに環境中のアレルゲン (ホコリやタバコの煙、消臭剤・ヘアスプレーなど)の刺激が加わることで一気に気道の炎症が悪化し、咳や気道の内腔が狭くなることで呼吸困難などの症状が現れます。
肺や気管支での様々な炎症や変化は、最初は元に戻る変化(可逆的)ですが、症状が持続し慢性的になると元に戻らない変化(不可逆的)が起きてしまいます。
そのため、喘息の治療は気道の炎症を速やかに鎮め、発作がおこらない状態を長期間維持することが最も大切です。
【症状】
猫喘息の主な症状は人の喘息同様に、気道の炎症に関連した呼吸器系の症状です。
具体的には、以下のような症状が見られます。
・咳 (人のようなゴホゴホという音ではなく、ズーズーやゲッゲッに近い音)
・呼吸が荒くなる
・呼吸をする時にヒューヒューやガーガーと言う音がする(喘鳴音)
・口を開けて苦しそうに呼吸をする
・呼吸の時にお腹がベコベコと動いている
・動きたがらない
なお、猫の咳は人の咳の様子とかなり異なるため、飼い主様が咳をしていることに気付かないというパターンがよくあります。日頃から猫の正常な呼吸の様子を知ることは極めて大切です。
喘息が悪化し、呼吸困難が続くとチアノーゼと呼ばれる非常に危険な状態に陥ることがあります。チアノーゼは、体内の酸素が不足している状態を指し、その結果として口や舌が紫色に見えることが特徴です。これは身体全体が酸素不足になっていることを示しており、非常に危険な状態です。
このような場合はすぐに動物病院を受診して気道の腫れを和らげ、酸素吸入などの緊急処置を行う必要があります。
【診断方法】
まず、咳や呼吸困難を示す他の病気、例えばウイルス性疾患、肺炎、気道内異物などを除外するために、身体検査、血液検査、レントゲン検査、内視鏡検査、気管支肺胞洗浄検査などが行われます。
これらの検査により他の病気が除外された後、咳や喘鳴音の繰り返し発生、ステロイド(気管の炎症を抑える薬)や気管支拡張薬での症状改善、強い発作性の咳の有無など総合的に判断して診断を行います。
また、猫喘息はアレルギーによるものであることが多いため、アレルギー血液検査を行うこともあります。
【治療方法】
猫喘息の治療には、内科治療と生活環境の改善の両方が重要です。猫喘息の症状が比較的軽い場合、ステロイド薬の吸入療法が主な治療となり、臨床徴候の悪化時にはステロイド薬の全身投与と気管支拡張薬を投与し、効果を補います。
また猫喘息は、アレルギー体質が病態に大きく関与しているため、完治することは難しいです。そのため、症状が悪化しないように継続的な治療が必要です。
加えて、生活環境の改善も猫喘息の管理には欠かせません。空気清浄機の設置やこまめな掃除を行うこと、消臭剤やヘアスプレー、タバコの煙、香水などの使用を控えることで、呼吸から吸い込むアレルゲンを少しでも減らすことが大切です。
【予後】
猫が将来的に喘息になるか、あるいは特定のアレルギーにどのように反応するかを事前に知ることは非常に難しく、現在のところ猫喘息の確実な予防法はありません。しかしながら、生活環境から消臭剤、ヘアスプレー、タバコの煙など、猫喘息を引き起こす可能性のあるアレルゲンを排除することにより、猫喘息のリスクを減らすことは可能です。
もし愛猫が猫喘息を発症しても、適切な薬で症状を抑えることにより、良好な予後を期待できます。ただし、喘息による強い咳や呼吸困難が見られる場合は、チアノーゼへと進行する恐れがあり、これは非常に危険な状態です。このような状況に直面した場合は、直ちに動物病院を受診することが重要です。