慢性喉頭炎
耳鼻科
【病態】
「喉頭炎」とは、喉頭部(声帯を含む気道の入り口近辺、人でいう「のどぼとけ」のあたり)の粘膜が細菌やウイルス感染などによって炎症を起こす状態を指します。
慢性喉頭炎は、喉頭部の炎症が持続または再発を繰り返すことが特徴です。
喉頭は発声だけでなく、気管への入口としても重要な器官です。
炎症が続けば日常の「ごはんを飲み込む」「呼吸する」という基本動作にも支障をきたすことがあります。
<犬の慢性喉頭炎>
犬の場合2か月以上の症状が続くと、慢性喉頭炎の目安になるとされています。
犬では、咳そのものが喉頭炎や喉頭の過敏性を誘発する可能性もあり、他の疾患(鼻・咽頭・消化管など)との関連を考えなければなりません。
<猫の慢性喉頭炎>
猫は1か月以上の咳や異常呼吸音などが慢性喉頭炎の目安になるとされています。
通常であれば、喉頭の炎症は1〜2週間程度で改善しますが、何らかの原因で炎症が慢性化し、慢性喉頭炎に発展するケースもあります。
また猫は犬よりも喉頭が非常に繊細であり、猫ヘルペスウイルスや猫カリシウイルス、細菌などの感染で喉頭炎になることが多いです。
猫の慢性喉頭炎は粘膜の肥厚・腫脹、線維化、可動性の低下といった器質的な変化を伴うことが多く、腫瘍や喉頭麻痺などを除外した上で「炎症性喉頭疾患(ILD)」という総称も使われるほど、注目されている病気でもあります。
【症状】
「咳が続いているな……」と思って様子を見ていたら、突然声がかすれていたり、呼吸をする時に“ヒューヒュー”と音がしたりするようになる。
こうした違和感は慢性喉頭炎のサインかもしれません。
犬や猫の慢性喉頭炎は進行がゆるやかなことが多いため、初期には見逃されがちです。
一般的な以下の症状を見落とさないようにしましょう。
・持続する咳
・声の変化・かすれ声:通常よりも声が細く、鳴き声が弱々しくなる
・飲み込み時のむせ・誤嚥:ごはんや水を飲むときにむせることが増える
・よだれの増加:喉の違和感から唾液分泌が増える
・呼吸時の異音・努力呼吸:吸気時にヒューという音がする、呼吸が浅く、苦しげに見える
・元気消失・食欲低下:喉の痛みや不快感により全身状態にも影響が出る
稀ではありますが、重症化すると呼吸困難や誤嚥性肺炎など命に関わる病気に発展することがあるため、これらの症状が見られたらすぐに獣医師の診察を受けてください。
【診断】
慢性喉頭炎の診断のため、動物病院ではいくつかの検査を組み合わせて確認していきます。
◆身体検査(視診・触診)
まずは、ご自宅での様子や症状の経過、過去の病歴などを詳しくお聞きし、一般的な身体検査から始めます。
視診・触診によって、鳴き声の変化、呼吸の仕方、咳の有無、発熱の有無などを確認します。
◆X線検査
喉頭の炎症だけでなく、呼吸器全体や消化器疾患が関係している可能性もあるため、必要に応じて胸部のX線検査を行い、気管や喉頭付近の形状や動きに異常がないかをチェックします。
◆血液検査
血液検査では全身の状態を把握します。
ただし慢性喉頭炎の場合、これらの検査だけでは異常を確認できず、確定診断にはさらなる検査が必要となる場合があります。
◆喉頭内視鏡検査
症状が長引いている場合や、喉頭腫瘍・喉頭麻痺などの鑑別が必要な場合には、全身麻酔下での喉頭内視鏡検査を実施します。
この検査により、粘膜の腫れや肥厚、ポリープ様病変の有無、声帯の動きなどを直接観察し、病態の進行度をより正確に把握できます。
◆病理組織検査
さらに、必要に応じて喉頭の組織を一部採取し、外部の専門機関に病理検査を依頼し病理組織検査を実施するケースもあります。
【治療】
慢性喉頭炎の治療方針は、炎症の程度や原因に応じて異なりますが、基本となるのは喉頭粘膜の炎症を抑えること、そして刺激を最小限にする生活環境の整備です。
<薬物療法>
消炎剤(ステロイドまたは非ステロイド系)を使って炎症を落ち着かせるとともに、細菌感染の関与が疑われる場合には抗生剤を併用します。
慢性的に咳が続く場合や、咳そのものが喉頭に負担をかけていると考えられる場合には、鎮咳薬や去痰剤を組み合わせるなど対症療法を行って症状の緩和を図ります。
<吸入療法>
また、喉頭の乾燥や刺激を軽減する目的で、ネブライザー(吸入器)を用いた吸入療法を取り入れることもあります。
これは加湿された薬剤を喉の奥に直接届け、粘膜を潤しつつ炎症を和らげる方法です。基本的に動物病院内で行うことが多いケアです。
<環境の整備>
生活面のケアも決して軽視できません。
タバコの煙や香料、掃除用のスプレー、乾燥しすぎた空気など、粘膜への刺激となる要因は日常にあふれています。
そうした環境要因を一つずつ見直せば、再発や悪化のリスクを下げることができます。
部屋の加湿や、喉を興奮させない静かな生活環境の維持なども治療効果を高める上で非常に有効です。
【予後】
犬や猫の慢性喉頭炎は原因にもよりますが、早期に治療を行い、症状をある程度コントロールすることができれば良好な予後が期待できます。
たとえば、単に喉頭の炎症が慢性化している場合であれば、投薬や環境改善により良好な経過をたどることも少なくありません。
一方で、基礎疾患が背景にある場合や、炎症が長期にわたり続いて喉頭に器質的な変化が見られる場合などは慢性的な咳や声のかすれが残る恐れもあります。
また、高齢の動物では体力の低下により回復までに時間がかかる傾向があります。
いずれの場合も、早期に治療を開始することが良好な予後を得るために極めて重要です。
当院はネブライザーもご用意しております。愛犬や愛猫の呼吸状態に少しでも違和感を覚えた場合はぜひ当院までご相談ください。
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