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鼻腔内異物

耳鼻科

【病態】

鼻腔内異物とは、その名の通り鼻の奥に異物が入り込んでしまっている状態を指します。
何かの拍子に小さな異物が鼻の中に迷い込み、粘膜を刺激することで、くしゃみや鼻水といった症状が現れることがあります。

犬や猫の鼻の中は非常に繊細かつ複雑な構造をしており、中でも「鼻甲介(びこうかい)」という細かく入り組んだ骨構造が特徴です。
この鼻甲介は、吸い込んだ空気の中に含まれる異物やウイルスなどをキャッチし、体内に入り込まないように守る役割を果たしています。

ただし、こうした構造は外から入り込んだ異物が鼻の奥に引っかかりやすいという側面もあり、一度入り込んでしまうと自然には取れにくいこともあるため、注意が必要です。

鼻腔内異物として実際に見られるものには、次のようなものがあります。

・草の穂や種子
・小石、砂、土埃
・木片、細かい繊維、布の切れ端 など

特に草むらや原っぱでの散歩が多い犬の場合、においをかごうとして鼻を地面に近づけることが多く、その際に草の種子などが鼻に入り込んでしまうことがあります。

 

【症状】

鼻の中に異物が入り込むと、体はそれを外に出そうとしてさまざまな反応を示します。その中でも代表的なのが、連続するくしゃみや片側の鼻から出る鼻水です。
ただし、症状はそれだけにとどまらないことが多く、異物の種類や入り込んだ場所によってはさまざまなサインが現れるため、日ごろの様子を注意深く見守ることが大切です。

代表的な症状には、以下のようなものが挙げられます。

・繰り返し起こるくしゃみ
・粘り気のある鼻水(血が混じることも)
・前足で鼻をこすり続ける、壁などに顔をこすりつける行動
・頭を何度も振る、顔を左右非対称に動かす仕草
・鼻づまりによる呼吸音(ヒューヒュー、ブーブーなど)

 

▼くしゃみの原因についてはこちらで解説しています

▼異常な呼吸についてはこちらで解説しています

 

一見するとくしゃみや鼻水は風邪と思われることもありますが、これらの症状が片側だけに集中している場合や、数日たっても改善しない場合には、鼻腔内異物の可能性が高くなります。

 

▼鼻水が止まらない原因についてはこちらで解説しています

 

また、異物が鼻の中にとどまったままになると粘膜が炎症を起こし、そこから細菌感染を併発してしまうこともあります。
すると、はじめは透明だった鼻水が、次第に黄緑色や赤っぽい色に変化し、鼻づまりや呼吸のしづらさがより強くなっていきます。

 

▼鼻血の原因についてはこちらで解説しています

 

【診断】

鼻の奥は外から見ただけでは状態を確認することができない場所のため、視診だけで異物を見つけるのは非常に難しく、正確な診断のためには画像検査や内視鏡の使用が欠かせません
動物病院で行われる診断の流れは、一般的に次のようになります。

 

視診・触診・聴診
まずは、全身の健康状態を確認するために、体温、鼻の腫れや痛みの有無、呼吸音などをチェックします。
ここで鼻の左右差や炎症の兆候がないかも見ていきます。

 

レントゲン検査(X線)
鼻腔や副鼻腔の骨構造に異常がないかを確認します。
ただし、異物の種類によってはレントゲンに写らないこともあるため、補助的な検査として行われます。

 

内視鏡検査
麻酔をかけたうえで、細いカメラ(内視鏡)を鼻の奥まで挿入し、異物の有無を直接確認できる検査方法です。
見つかった異物はそのまま摘出できることも多く、診断と同時に治療が可能という大きなメリットがあります。

 

血液検査
異物が原因で炎症や感染が起きていないかを調べるため、全身の炎症の程度や感染の有無を確認します。

 

必要に応じてCT検査
症状が長引いている場合や、構造的な異常が疑われる場合には、より詳しく調べるためにCT検査を行うこともあります。
特に鼻腔や副鼻腔の奥深い部分に異常がある場合に有効です。

 

鼻腔内異物は、放置すると時間とともに炎症や細菌感染を引き起こし、治療が難しくなることがあります。
そのため、「いつもと違うくしゃみや鼻水が続く」「片側だけに症状がある」といった変化が見られた際には、できるだけ早く動物病院で詳しい検査を受けることが大切です。

 

【治療】

鼻腔内に異物が確認された場合、最も重要なのは、できるだけ早く異物を取り除くことです。
異物が長く残ったままになっていると、鼻の粘膜が強く刺激されて炎症が進み、腫れや細菌感染につながるおそれがあるため、速やかな処置が大切です。

 

<治療の主な流れ>

内視鏡下での異物摘出
麻酔をかけた状態で、内視鏡(カメラ)を使って異物の位置を確認しながら取り除く処置を行います。

 

洗浄処置
異物を除去した後、鼻腔内を生理食塩水で丁寧に洗い流し、粘膜に残った細かい汚れや分泌物を取り除きます。

 

投薬管理
治療後は、抗生物質や消炎剤を数日から1週間ほど投与し、炎症や二次感染をコントロールしていきます。

 

経過観察と術後ケア
鼻腔内異物の治療は、「異物を取り除けば終わり」というわけではありません。
異物によって傷ついた粘膜がきちんと回復するまでには時間がかかることもあります。
そのため、術後のケアや再診による経過観察がとても大切で、必要に応じて追加の投薬や再検査が行われることもあります。

 

【予後】

鼻腔内異物は、原因が明確で速やかに適切な処置が行われた場合には、予後は良好です。
異物を取り除いた後は、くしゃみや鼻水といった症状がすぐに落ち着き、数日以内には普段通りの呼吸や食欲を取り戻すケースが多く見られます。

ただし、以下のような状況にあてはまる場合は、注意が必要です。

・異物が鼻腔内に長期間とどまっていた
・傷が鼻の奥深くまで広がっていた
・二次感染を伴っていた
・高齢や持病などで回復力が低下している

特に、炎症が慢性化したことにより、鼻の中にポリープ(良性の腫瘤)ができてしまうケースでは、その後も鼻づまりやくしゃみといった症状が続くことがあります。

 

<再発を防ぐために>

再発を防ぐためには、普段の生活環境を見直すことが重要です。
草むらや砂利の多い場所を避ける、部屋の換気や清掃を定期的に行う、といった日々の小さな習慣が大切になります。

また、症状が落ち着いた後も、しばらくの間は注意深く様子を見ることが大切です。
再びくしゃみや鼻水などの症状が現れた場合には、自己判断せず、早めに動物病院を受診するようにしましょう。

 

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