猫の口内炎
歯科
【病態】
猫の口内炎は、口の中の粘膜に強い炎症が起きる疾患です。
頬や舌、歯ぐき、咽頭など広い範囲に炎症が広がることがあり、生活の質に影響しやすいのが特徴です。
初期は小さな赤みや軽い口臭から始まり、徐々に痛みで食事が難しくなる流れで進行していきます。よく見られる疾患ですが、猫の生活の質(QOL)に大きく関わる疾患と言えます。
慢性化すると、歯ぐき全体や口の奥まで真っ赤に腫れる「難治性口内炎」に移行することもあります。
<猫の口内炎の原因>
猫は免疫のバランスが崩れると、自分の口の中にある細菌や歯垢・ウイルスなどに過剰に反応してしまい、口内炎を発症することがあります。
また以下のような複数の原因が関わっているケースも少なくありません。
・歯周病
・猫カリシウイルス
・細菌バランスの乱れ
・体質
・ストレス など
▼歯周病についてはこちらで解説しています
【症状】
猫の口内炎の初期症状は、飼い主様から見ても気づきにくいものです。
まずは日常の食べ方や口元の様子を観察し、初期・進行・末期それぞれに見られる変化を知っておくことが早期発見につながります。
<初期症状>
まだ痛みが軽度なため、「少し違うかも?」という程度の変化にとどまることがあります。それでも、この段階で気づけると進行を抑えやすくなるため、早めの受診が役立ちます。
・少し強めの口臭
・歯ぐきのふちが赤い、口の中に赤い筋のような部分が出ている
・食べるスピードが落ちる、ドライフードを残すことが増える
<進行した状態>
炎症が深まり、痛みが強くなると食事のとり方や行動に明らかな変化が出てきます。
食事がうまくとれない状態が続くと体重が落ち、元気がなくなることも少なくありません。
・強い痛みで、食事量が明らかに減る、よだれが糸を引く
・口の中に白い膜や潰瘍(ただれ)が見える
・口を気にして鳴く・前足でこする、口の周りを触ると嫌がる
・体重減少、被毛のつやがなくなる、元気がない、不機嫌
<重度~末期の状態>
末期に近づくと、痛みが非常に強く、水を飲むことさえ負担になる状態に陥ります。ここまで進むと、体力の消耗も速く、できるだけ早い受診が必要です。
・ほとんど食べられず、水を飲むこともつらそうにする
・常によだれが出て口の周りが汚れる
・体が痩せて骨ばって見える、活動量が極端に減る
【診断】
口内炎の診断は、猫が示している行動変化と口腔内の状態を丁寧に確認することから始まります。
猫は痛みを我慢し、気づかれないようにする生き物ですが、口の疼痛は生活への影響が大きいため、いち早く病院での診断・治療につなげてあげてください。
◆ 問診
食事量や食べ方の変化、口臭、よだれ、体重の推移などを聞き取り
◆ 身体検査
口腔内の赤みや腫れ、潰瘍の広がりをチェックします。痛みが強い場合は、鎮静下または麻酔下で詳しく観察することもあります。
◆ 歯科レントゲン検査
歯周病の程度や歯根のトラブルを確認できます。血液検査では貧血や炎症反応、腎臓・肝臓などの全身状態に加え、猫エイズウイルス・猫白血病ウイルスなど基礎疾患の有無も調べます。
必要に応じて、口腔粘膜の組織検査を行い、腫瘍など別の病気を除外することもあります。
【治療】
猫の口内炎の治療は、「痛みをどれだけ減らせるか」を重視して進めます。
痛みが和らぐだけで食事量が改善し、生活の質が大きく変わることがあるためです。
動物病院で行う治療は、薬や歯科処置、補助療法の他、食事やサプリメントによるサポートやアドバイスを行います。
<薬による痛み・炎症のコントロール>
まず取り組むのは薬を用いた痛みの軽減です。口内炎は日常生活に大きな影響を与えるため、痛みの有無で「食べられるかどうか」が大きく変わります。
・猫に使用できる安全性の高い鎮痛薬
・ステロイドや免疫抑制剤による炎症コントロール
・細菌感染が疑われる場合のみ抗菌薬を使用
ステロイドは高い効果を示しますが、副作用もあるため長期使用の際は慎重な管理が必要です。獣医師が体調を見ながら量を調整し、ほかの治療と組み合わせて使用します。
<歯科処置・抜歯>
歯石や重度の歯周病による刺激が炎症を悪化させている場合は、歯科処置が治療の要になります。
具体的には「歯石除去」や「抜歯」が行われます。難治性口内炎ではほとんどの歯、または全顎抜歯が選択されることもあります。
抜歯や麻酔に不安を感じる飼い主様も多いですが、抜歯後に食事が普通にとれるようになるケースは多く、生活の質が大きく改善することがあります。
処置は全身麻酔で行うため、事前検査で安全性を確認したうえで実施します。
<食事・サプリメントによるサポート>
痛みがある猫にとって「食べやすさ」はとても重要です。フードを工夫するだけでも食事量が改善することがあり、栄養不足や体重減少を回避できます。
◆ 食事の工夫例
・ウェットフードや柔らかいフードへの切り替え
・粒が小さめのフードを選ぶ
・炎症やアレルギーを意識した療法食を活用
・オメガ3脂肪酸や口腔ケアサプリを補助的に使用
<補助的な治療>
症状の重さや体質に合わせて、痛みや炎症をやわらげるための補助療法を併用することがあります。
「インターフェロン」などの免疫調整剤を使うことで、炎症の原因となる過剰な免疫反応を落ち着かせ、痛みの軽減を助けます。
これらは単独で完治を目指すものではなく、猫が少しでも楽に過ごせるよう生活の質を支える目的で取り入れられます。
口内炎は慢性化しやすく、獣医師の診断に基づく治療と組み合わせて使うことが大切です。
【予後】
猫の口内炎は、一度薬を飲んだからといって完全に治りきるとは限りません。
慢性化するケースも多く、早い段階で治療を始めれば痛みのコントロールがしやすく、健康の維持にもつながります。
歯科処置や抜歯によって長期的に症状が改善し、普段どおりに食べられるようになる猫も少なくありません。
一方で、重度例や基礎疾患を抱える場合は、通院と内服、サプリ、食事管理を続ける長期的なケアが必要です。
自然治癒に頼りすぎず、猫の生活の質を保つことを中心に考えることが何より大切になります。
当院では、薬・サプリ・食事・歯科処置を組み合わせ、状態に合わせたオーダーメイドの治療でサポートいたします。
猫が少しでも快適に過ごせるよう、小さなことでもどうぞ遠慮なくご相談ください。




