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慢性刺激性喉頭炎

呼吸器科

【病態】

慢性刺激性喉頭炎は、喉頭に慢性的な刺激が加わることで生じる病変です。
病変が腫瘤状にみられることもあり、慢性刺激性喉頭腫瘤と表現される場合もあります。
喉の奥にできるため外からは気づきにくく、咳や声の変化、呼吸のしづらさにつながることがあります。

喉頭とは、喉の奥にあり、空気の通り道と声を出す器官を含む部分です。
その中でも、声門(声帯がある場所)周辺に炎症が繰り返されると、粘膜が過剰に増殖し、
肉芽腫という腫瘤(しゅりゅう)ができることがあります。

この病変は、がんのような悪性の腫瘍ではなく慢性的な炎症によって形成される良性の組織です。
ただし、良性だからといって放置してよいわけではありません。慢性刺激性喉頭腫瘤は腫瘤が小さいうちは症状が目立ちませんが、徐々に大きくなると呼吸が苦しくなり、呼吸困難に陥ることもあります。

慢性刺激性喉頭炎は、以下のような慢性的な刺激や炎症が原因で生じると考えられます。

・呼吸時の刺激:狭い気道を空気が無理に通ることで、喉頭粘膜が繰り返し刺激されます
・慢性的な咳や吠え声:声帯周辺に負担がかかり続けます

こうした刺激が長期間続くと、粘膜が修復しようとしたり刺激から防御しようとして過剰に細胞が増殖し、盛り上がるように腫瘤が形成されてしまいます。

 

<短頭種気道閉塞症候群の進行過程で発生>

慢性刺激性喉頭炎は、短頭種気道閉塞症候群の進行過程で発生しやすいことが知られています。
短頭種気道閉塞症候群とはフレンチブルドッグ、パグ、ボストンテリア、ブルドッグ、シーズーなど、鼻が短い犬種特有の呼吸器疾患です。

以下のような構造的な問題が組み合わさって、呼吸がしづらくなります。

・鼻の穴や鼻の中が非常に狭い
・喉の奥の軟口蓋が長すぎて、気道を塞ぐ
・喉頭の軟骨が弱く、呼吸時に潰れてしまう(喉頭虚脱)
・気管が生まれつき細い

このような問題があると、呼吸のたびに喉頭粘膜に過度な負担がかかり、慢性的な炎症が起こりやすくなります。その結果、慢性刺激性喉頭腫瘤が形成されるのです。

つまり、慢性刺激性喉頭腫瘤は、短頭種気道閉塞症候群が進行した結果として現れる、二次的な病変と考えられます。

 

【症状】

慢性刺激性喉頭炎の症状は、初期には分かりにくいこともありますが、注意深く観察すると、いくつかのサインに気づくことができます。

呼吸音の変化
最も分かりやすいサインが、呼吸音の変化です。
「ゼーゼー」「ヒューヒュー」のような音や「ガーガー」「グーグー」といったいびきのような音がします。
また、リラックスして寝ているときに気道が狭くなり、睡眠時のいびきが以前より大きくなることもあります。

 

興奮時や運動後に呼吸が苦しそうになる
慢性刺激性喉頭腫瘤があると、運動時や興奮時に呼吸困難が顕著になります。

たとえば…
・散歩から帰ってきた後、なかなか呼吸が落ち着かない
・遊んでいる最中に、突然座り込んで口を開けて呼吸する
・興奮すると、舌が紫色になる(チアノーゼ)

このような様子が見られたら要注意です。

安静時には問題なくても、体が酸素を多く必要とする興奮時や運動後の場面、または食後にも症状が現れるのが特徴です。

 

口を開けて呼吸する様子が増える
犬は通常、鼻で呼吸をします。しかし、気道が狭くなると、口を開けて呼吸する(開口呼吸)ようになります
安静時でも口を開けっぱなしにしている、舌を出して呼吸している様子が増えた場合、呼吸器に問題がある可能性が高いです。

 

<重度では呼吸困難やチアノーゼにつながる可能性>

慢性刺激性喉頭腫瘤が進行すると、以下のような重篤な症状が現れます。

呼吸困難:苦しそうに大きく口を開けて呼吸する
チアノーゼ:舌や歯茎が紫色になる(酸素不足のサイン)
失神:呼吸が追いつかず、意識を失う

こうした症状が見られた場合は命の危険性があり、緊急対応が必要です。すぐにかかりつけの動物病院もしくは夜間救急動物病院などを受診してください。

 

【診断】

喉頭は喉の奥深くにあり、単に口を開けて見ただけでは確認できません。
飼い主様が「喉が腫れている」と感じても、実際には扁桃炎など別の原因も考えられます。
そのため、慢性刺激性喉頭炎の診断には、専門的な検査が必要です。

慢性刺激性喉頭腫瘤を確認するには、鎮静または麻酔下での喉頭部の直接観察を必要とします。
「喉頭鏡」という器具を使って喉の奥を以下の観点から確認します。

・腫瘤がどこにあるのか(声門の上か下か、左右どちら側か)
・腫瘤の大きさ(どの程度気道を塞いでいるか)
・腫瘤の性状(硬いか柔らかいか、色はどうか)
・呼吸時に腫瘤がどう動くか

当院では日本でも数少ない呼吸器専門診療として、犬種や持病などによる個体差も踏まえ、総合的に評価します。
原因を的確に見極めたうえで、呼吸が少しでも楽になる最適な治療計画をご提案しています。

 

【治療】

慢性刺激性喉頭炎の治療は、腫瘤の大きさや呼吸への影響の程度によって異なります。

軽度の場合:炎症コントロールを目的とした内科管理
腫瘤が小さく、呼吸への影響が軽度の場合、まずは内科的管理を試みます。

・抗炎症薬:炎症を抑え、腫瘤の増大を防ぐ
・体重管理:肥満は呼吸器への負担を増やすため、適正体重を維持する
・環境管理:興奮や過度な運動を避ける、涼しい環境を保つ

内科管理で症状が安定すれば、経過観察を続けます。

 

中等度以上の場合:外科的切除を検討
腫瘤が大きく、呼吸困難を引き起こしている場合、外科的切除が必要です。
麻酔下で喉頭を開き、腫瘤を切除します。レーザーや電気メスを使って、できるだけ正常な組織を傷つけないように切除します。
切除した組織は、病理検査に提出し、悪性腫瘍でないことを確認します。

 

この治療の最優先事項は、呼吸の確保です。呼吸困難は命に関わるため、緊急性が高い場合には、迅速な外科的介入が必要です。
当院では飼い主様と相談しながら、その子にとって最善の治療法を選択しております。

 

【予後】

慢性刺激性喉頭炎の予後は、早期発見と適切な治療によって大きく変わります。
腫瘤が小さいうちに発見し、適切な治療を行えば、呼吸状態の安定が期待できます。
内科管理だけで症状をコントロールできることもあれば、外科的切除を行うことで多くの犬が術後に呼吸が楽になり生活の質の改善が見込めることもあります。

一方、重症化してから発見された場合、緊急対応が必要になることがあります。
呼吸困難が進行すると、酸素不足により全身の臓器にダメージが及びます。最悪の場合、命に関わることもあります。

慢性刺激性喉頭腫瘤だけを治療しても、鼻腔狭窄や軟口蓋過長が残っていれば、再び呼吸器への負担が増え、再発する可能性があります。
だからこそ、総合的な呼吸器管理が必要なのです。
愛犬の呼吸の変化について、少しでも気になることがあれば、当院にご相談ください。

 

参考文献
Riecks TW, Birchard SJ, Stephens JA. Surgical correction of brachycephalic syndrome in dogs: 62 cases (1991-2004). J Am Vet Med Assoc. 2007;230(9):1324-1328.

Lodato DL, Hedlund CS. Brachycephalic airway syndrome: pathophysiology and diagnosis. Compend Contin Educ Pract Vet. 2012;34(7):E3.

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