膿皮症
皮膚科
【病態】
膿皮症(のうひしょう)は犬によくみられる皮膚トラブルのひとつです。
皮膚の表面に赤いポツポツやフケが出るだけでおさまる軽度の状態から、重症化すると皮膚の奥まで炎症が広がり、腫れや痛みを伴うようになります。
皮膚にはもともと常在菌がいますが、健康な状態ではほとんどは大きな問題なく過ごせます。ところが、皮膚のバリア機能が乱れると細菌が増えやすくなり、そこから炎症が起こって、赤いブツブツや膿疱(のうほう)、かさぶた、脱毛へとつながっていきます。
そのため、膿皮症は単独で発症するだけでなく、別の疾患が引き金となる二次的な感染も多いのが特徴です。一例としてこのような背景が考えられます。
・アレルギー性皮膚炎
・蒸れやすい体質
・外部寄生虫
・シャンプーやスキンケアの影響
・甲状腺機能低下症 や クッシング症候群などの内分泌疾患
よくある皮膚トラブルや一時のゆらぎと軽く考えず、早めに動物病院へ相談いただけると安心です。
▼アレルギー性皮膚炎についてはこちらで解説しています
▼クッシング症候群についてはこちらで解説しています
【症状】
飼い主様が最初に気づきやすいのは、赤いブツブツ、円形の脱毛、フケ、かさぶた、皮膚のニオイといった変化です。
お腹や内もものように毛が薄い部分では赤みが目立ちやすく、背中や脇、足先などに症状が出るケースもあります。
さらに、発疹にこのような様子が見られる場合は要注意です。
・水ぶくれのように見える
・黄味がかった白色の小さな膿疱がある
・じゅくじゅくしている
・触ると嫌がる
このような変化は、皮膚表面の炎症が強くなり、細菌感染により膿がたまっている可能性が考えられます。
また、皮膚の見た目だけでなく生活の中の変化にも気付けると良いでしょう。
膿皮症では、かゆみが主になる場合もあれば、痛みや違和感が強く、抱っこやブラッシングを嫌がる場合もあります。
気になる部分をなめ続けたり、体をこすりつけるなど落ち着きがなくなる様子が見られます。これらは、犬が何らかの不快感を抱えているサインです。
<膿皮症が慢性化すると現れる変化>
膿皮症が長引くと、皮膚が自分を守ろうとして皮膚が厚くゴワゴワしてきたり、色素沈着によって黒っぽく見えたりすることもあります。
さらに、次のような場合は、早めの受診を考えたいところです。
・赤みや脱毛の広がりが早い
・水ぶくれや出血がある
・何度も繰り返す
・かゆみや痛みで眠れない様子がある
・黒ずみや皮膚の厚みが目立ってきた
このようなケースでは、膿皮症が進んでいるか、別の疾患やトラブルが重なっている可能性があります。
【診断】
赤い発疹や脱毛は他の皮膚病でもみられるため、動物病院では症状の出方や再発の有無、かゆみの程度、季節性などを確認しながら診断を進めます。
問診では、「いつから出たのか」「どこに出やすいのか」「どのくらいなめたりこすったりしているか」「最近シャンプーやスキンケアを変えていないか」などを丁寧にお伺いします。以前にも同じような症状が出ていた場合は、ぜひ獣医師にその旨をお伝えください。
<皮膚の状態の確認>
そのうえで、実際に皮膚や被毛の状態を診て、赤み・ブツブツ・かさぶた・フケ・べたつき・におい・脱毛の有無などを観察します。
あわせて、皮膚の表面にセロハンテープや綿棒をあてて細胞や汚れを採取し、顕微鏡で細菌や酵母菌(マラセチア)の増殖を確認していきます。
こうした検査は強い負担が少なく、結果が早くわかるため、治療方針を決めるうえで役立ちます。
膿皮症以外の皮膚病が疑われる場合は、ノミ・ダニなどの寄生虫の有無や、真菌感染の可能性も確認します。
さらに、何度も繰り返す場合や治りが悪い場合には、アレルギー検査やホルモンバランスの乱れを調べる血液検査により、膿皮症を起こしやすくしている背景がないかをあわせて調べることもあります。
表面の炎症だけを一時的に抑えても、原因が残っていると再発につながるため、必要に応じてこうした点まで含めて診断を進めていきます。
【治療】
膿皮症の治療では「細菌感染を抑えること」と「再発の大もとになっている原因に対応すること」の両方が重要です。
以下のような選択肢の中から、症状の強さや広がり方によって治療を組み合わせていきます。
・外用薬
・内服薬
・薬用シャンプー
・スキンケアの見直し
軽い段階であれば局所的な治療で改善を目指せる場合もありますが、範囲が広いときや炎症が強いときには、より長期的な目線での治療を必要とします。
また、慢性的に繰り返している場合には、今起きている発疹だけでなく、生活環境や皮膚管理の方法も見直しも欠かせません。
そして何より見た目が改善した段階で、自己判断で治療を中止してしまうのは控えましょう。赤みが引いていても、皮膚の状態がまだ十分に回復していない恐れがあり、中途半端に終えると再発につながる恐れがあります。
【予後】
膿皮症は、早めに状態を把握して適切に治療できれば、改善が期待しやすい皮膚疾患です。
一方で、背景にアレルギーや内分泌疾患などがある場合は、何度も繰り返しやすくなります。特に慢性化したケースでは、皮膚の黒ずみや厚みが残ったり、治療期間が長くなったりすることもあります。
<過剰なシャンプーに注意>
また、皮膚を清潔に保つことは重要ですが、洗いすぎが逆効果になる場合もあります。頻繁なシャンプーや強すぎる洗浄は、かえって皮膚のバリア機能を乱すため、愛犬の状態に合った方法を選ぶ必要があります。
おうちでのシャンプーが不安な方は、動物病院併設のトリミングサロンでのケアもご検討ください。当院の併設サロンでは、獣医師と連携のうえ、「皮膚に優しいシャンプー」や「保湿」まで丁寧に行います。シャンプー選びやケア方法についてもご相談ください。
▼当院のトリミング、シャンプーについてはこちら
<再発管理のためのポイント>
そして、再発防止のためには、処方された治療を指示どおりに続け、自己流のスキンケアに頼りすぎないことが重要です。
症状が落ち着いたあとも、以下の変化が見られたら「再発」のサインです。早めに気付いて動物病院を受診しましょう。
・フケ・においの再燃: 目に見える赤みが出る前のサインです。
・毛が薄くなる: 炎症が奥でくすぶっている可能性があります。
・以前と同じ場所を気にする: 違和感や痒みが戻っている証拠です。
そして、膿皮症を繰り返すときは背景疾患も含めて見直しが必要です。
皮膚の病気は通院が長期化することもありますが、当院では動物たちにとっても飼い主様にとってもストレスなく通いやすい病院づくりを心がけています。
膿皮症は日々の過ごし方も大いに関わってくるため、ご家庭でのケアや環境改善に関しても丁寧にアドバイスいたします。愛犬にかゆがっている様子が見られたら、ぜひお早めにご相談ください。
■病院づくりの詳細についてはこちら





