犬のおりものが気になる|原因と対処法、病気のサインについて
コラム
愛犬のおりものを見つけたとき、「このまま放っておいて大丈夫?」「何かの病気かもしれない…」と不安に感じることはありませんか?
実は、おりものには正常なものと注意が必要なものがあり、愛犬の健康状態を知る大切なサインになることもあります。
今回は、愛犬のおりものについて正常と異常のおりものの見分け方や、注意すべき症状、適切な対処法について詳しく解説します。
■目次
1.正常なおりものとは?
2.異常なおりものを見分けるポイント
3.飼い主様が日常的にチェックすべきポイント
4.おりものの異常が表す病気のサイン
5.すぐに病院を受診すべき症状
6.日常的なケアと予防法
7.まとめ
【正常なおりものとは?】
正常なおりものは、体の自然な防御機能の一部であり、異常ではありません。しかし、量や色、においに変化がある場合は注意が必要です。
<通常時のおりもの>
健康な犬では、少量のおりものが分泌されることがあります。おりものは膣や子宮への感染を防ぎ、デリケートな部位を保護する重要な役割を持っています。
・色:透明や薄い白色、場合によってはわずかに黄色味を帯びる
・におい:強いにおいがなければ問題ありません
分泌量が少なく、においが気にならない場合は、正常なおりものと考えて問題ありません。
<発情期のおりもの>
雌犬の場合、発情期におりものが出るのは自然な生理現象です。
発情期の初期には、血が混ざったおりものが出ることがありますが、発情期が進むにつれて、徐々に透明や白っぽい液体へと変化します。
発情期のサイクルが規則的な犬では、これらのおりものは正常なものと考えて問題ありません。
<犬種や年齢による違い>
犬種や年齢によっては、おりものの量や頻度に違いが見られることがあります。
大型犬の場合、体が大きいためおりものの量が比較的多い傾向があります。また、若い犬やシニア犬では、ホルモンバランスの変化により、おりものの特徴が変わることがあります。
【異常なおりものを見分けるポイント】
愛犬のおりものが正常か異常かを見極めるためには、以下のポイントに注意することが大切です。
<色>
・正常:透明、白っぽい、または薄い黄色が一般的です。発情期中は血が混じって少しピンク色を帯びることもあります。
・異常:緑色、濃い黄色、茶色、灰色、鮮血色は異常のサインです。
特に緑色や灰色のおりものは、感染や炎症の可能性が高いため注意が必要です。
<量>
・正常:ごく少量で、普段の観察で気づかない程度がほとんどです。
・異常:大量に分泌される場合や、日常的におりものが続く場合は異常が疑われます。
<におい>
・正常:ほとんど無臭、またはわずかに酸っぱいようなにおいです。
・異常:腐敗臭や酸っぱいにおい、異様な悪臭がする場合は膣炎や感染症の可能性があります。
<粘り気>
・正常:さらさら、または少しとろみがある程度です。
・異常:ドロッとした濃い粘り気や、膿のような質感は異常のサインです。
【飼い主様が日常的にチェックすべきポイント】
愛犬のおりものの状態を把握するためには、日常のケアが欠かせません。
トイレの後にお尻や陰部周りをチェックし、ペットシートや床に付着したおりものの色や量を観察する習慣をつけましょう。
普段と違う変化に気づいた場合は写真を撮るなどして記録しておくと、診断に役立つ情報となります。
【おりものの異常が表す病気のサイン】
おりものの異常は、いくつかの疾患の初期症状として表れることがあります。ここでは代表的な病気とその特徴、注意すべきリスクについて説明します。
<膣炎>
膣炎は、膣内が炎症を起こすことでおりものが増える病気です。おりものは黄色や緑色になることが多く、場合によっては悪臭を伴うこともあります。また、愛犬が陰部を頻繁に舐める様子が見られるのも特徴です。
この症状を放置すると感染が広がり、慢性化する恐れがありますが、初期段階で適切な抗生物質による治療を受ければ、速やかな改善が期待できます。
<子宮蓄膿症>
子宮蓄膿症は、特に避妊手術を受けていない中高齢の雌犬に多く見られる疾患です。子宮内に膿が溜まり、濃い黄色や緑色のおりものが出ることがあります。おりものは膿のような質感で、強い悪臭を伴うことが特徴です。
症状が進行すると食欲の低下や元気消失が見られるほか、発熱などの全身症状を伴うこともあります。
放置すれば命に関わる状態になるため、早急な治療が必要です。重症の場合は子宮と卵巣の摘出手術が行われることもあります。
<腫瘍(膣や子宮の腫瘍)>
膣や子宮の腫瘍が原因でおりものの異常が見られることもあります。特徴としては、おりものに血が混じる場合や、異常なおりものが持続的に続くことが挙げられます。
特に高齢の犬に多く発症し、進行すると排尿や排便が困難になることもあります。
良性腫瘍であれば摘出手術によって改善が期待できますが、悪性腫瘍の場合は進行すると予後が悪くなるため、早期発見と慎重な対応が必要です。
<性ホルモンの異常>
性ホルモンの異常もおりものの異常を引き起こす原因の一つです。ホルモンバランスが乱れることでおりものが増加し、発情期以外でも分泌が続くことがあります。
ホルモン異常が長く続くと、子宮や卵巣の疾患のリスクが高まる可能性があるため、注意が必要です。
なお、おりものの異常と間違えやすい疾患として尿路感染症があります。
尿路感染症では、尿道から膿や血が混じった分泌物が見られることがあり、膣からの「おりもの」と混同されやすいため注意が必要です。
この疾患の特徴として、頻尿や排尿時の痛み、血尿が挙げられます。適切な治療を受けずに放置すると、感染が腎臓にまで広がり、腎不全などの重大な合併症を引き起こす恐れがあるため、こちらも早めの診察と治療が大切です。
【すぐに病院を受診すべき症状】
犬のおりものに異常が見られる場合、緊急性の高い症状を伴うことがあるため、早めの対応が重要です。以下のような症状があれば、すぐに動物病院を受診してください。
・出血を伴うおりもの
発情期以外で血が混じったおりものが見られる場合、膣や子宮の炎症、腫瘍、子宮蓄膿症などが疑われます。特に出血量が多い場合や、頻繁に続く場合は緊急性が高いため注意が必要です。
・強い異臭がある
腐敗臭や酸っぱいにおいを伴うおりものは、細菌感染や膿の蓄積が原因の可能性があります。この状態を放置すると感染が全身に広がり、命に関わるリスクが高まるため、早急な受診が必要です。
・食欲不振や元気消失を伴う
おりものに加えて、食欲がない、元気がなく寝てばかりいるといった症状が見られる場合、子宮蓄膿症など全身に影響を及ぼす疾患が疑われます。特に発熱や震えがある場合は重症の可能性が考えられます。
・頻繁に陰部を舐める
通常よりも頻繁に陰部を舐める場合、違和感や痛みを感じている可能性があります。これは感染や炎症が進行しているサインとしてよく見られる行動です。
これらの症状を見逃すと病気が進行し、命に関わる状態になることがあります。特に子宮蓄膿症は短期間で全身の状態が悪化するケースが多いため、異常を感じたら迷わず病院を受診しましょう。
【日常的なケアと予防法】
愛犬のおりものに関するトラブルを防ぐには、日常的なケアと予防が欠かせません。以下のポイントを参考に、健康管理を行いましょう。
・衛生管理の徹底
デリケートゾーンは、常に清潔に保つことが大切です。
お散歩やトイレの後に陰部が汚れているのに気づいたら、湿らせた柔らかいタオルやペット用ウェットティッシュで優しく拭き取ってあげましょう。日頃から清潔を心がけることで、細菌の繁殖を防ぎ、感染症のリスクを減らすことができます。
・適切なトリミング
毛が長い犬種は陰部周辺が汚れやすいため、定期的にトリミングを行って毛を短く整えておきましょう。
・生活習慣の改善
過度なストレスや不規則な生活は、ホルモンバランスの乱れを引き起こすことがあります。適度な運動、規則正しい食事、落ち着いた生活環境を心がけることで、愛犬の体調を整えましょう。
・避妊手術の検討
避妊手術は、子宮蓄膿症やホルモンに関連する疾患の予防に効果的です。手術を受けるタイミングや、メリット・デメリットについては獣医師に相談し、適切な判断を行いましょう。
・定期的な健康診断
年齢を重ねるほど病気のリスクが高まります。定期的に健康診断を受け、膣や子宮の状態をチェックすることで、異常を早期に発見することが可能です。
【まとめ】
犬のおりものは、正常な場合もあれば、病気のサインであることもあります。異常なおりものは、色や量、におい、粘り気に変化が表れるため、日頃から愛犬の様子をよく観察することが大切です。
日々のケアや生活環境の整備も健康維持には欠かせません。清潔を保つこと、適切な食事や運動を心がけること、そして定期的な健康診断を受けることで、トラブルを未然に防ぐことができます。
少しでも「いつもと違う」と感じたら、早めに動物病院に相談しましょう。
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