愛犬の抜け毛が増えた原因は?|換毛期との違いや病気のサインを獣医師が解説
コラム
「愛犬の抜け毛が多くて、毎日掃除が大変…」そんなお悩みをお持ちの飼い主様も少なくないのではないでしょうか?犬の抜け毛は、多くの場合自然な現象であり、季節の変わり目や毛の生え変わりのサイクルによるものです。
しかし、抜け毛の中には、病気が原因となっている場合もあるため注意が必要です。通常の抜け毛と病気が原因の抜け毛を見分けることは、愛犬の健康管理をするうえでとても重要なポイントです。
そこで今回は、犬の抜け毛に関する基本知識から、注意が必要な原因、具体的な対策方法について詳しくご紹介します。また、抜け毛に隠れているかもしれない病気のサインや、動物病院に相談すべきタイミングについても解説します。
■目次
1.季節の変わり目で増える犬の抜け毛|換毛期の仕組み
2.注意!抜け毛が急増する原因
3.獣医師に相談すべき抜け毛のサインとは?
4.抜け毛対策に役立つ日々のケア方法
5.まとめ
【季節の変わり目で増える犬の抜け毛|換毛期の仕組み】
犬の抜け毛は、季節の変化とともに起こる「換毛(かんもう)」という生理現象によるものです。
例えば、春には冬の間に蓄えた厚い毛が抜け、夏に向けて薄い毛に生え変わります。
一方で秋になると、夏毛が抜けて防寒性の高い冬毛が生えそろいます。
このように、換毛は犬にとって自然で健康的な現象ですが、毛の量やケアの方法は犬種によって異なるため注意が必要です。
犬の被毛には「ダブルコート」と「シングルコート」の2つのタイプがあり、それぞれ抜け毛の特徴が異なります。
<ダブルコート>
柴犬やゴールデン・レトリーバーなどの犬種が該当します。ダブルコートの犬は、柔らかい下毛(アンダーコート)と、外側の硬い毛(トップコート)の2層構造の被毛を持っています。
このうちアンダーコートが季節に応じて生え変わるため、これらの犬種では換毛期に大量の毛が抜けます。特に春と秋は抜け毛の量が増えるため、定期的なブラッシングが欠かせません。
<シングルコート>
プードルやマルチーズなどが該当します。このタイプの犬は、アンダーコートを持たないため、換毛期の影響をあまり受けません。そのため、抜け毛の量も少なめです。
ただし、毛が絡まりやすい傾向があるため、別のケアが必要となります。
【注意!抜け毛が急増する原因】
愛犬の抜け毛が急に増えたり、普段と違う様子が見られたりする場合、生活習慣や健康状態に何らかの変化が起きている可能性があります。
ここでは、抜け毛が増える主な原因についてご紹介します。
<生活習慣に関連する原因>
・ストレス
環境の変化(引っ越しや家族構成の変化など)や、極端な運動不足は、犬にとって大きなストレスとなることがあります。
このストレスが被毛の成長サイクルを乱し、抜け毛の増加を引き起こすことがあります。
・食事の偏り
栄養バランスが崩れた食事は、被毛の健康にも大きな影響を与えます。
特に、タンパク質やオメガ3脂肪酸が不足すると、被毛がもろくなり、抜け毛が増える原因になります。
<病気が原因となるケース>
抜け毛が多いだけでなく、皮膚の異常や体調の変化がある場合は、以下のような病気が原因の可能性があります。
・アレルギー性皮膚炎
特定の食材や環境中のアレルゲン(ダニ、花粉など)が原因で、皮膚に炎症が起きる病気です。かゆみや赤みが伴うことが多く、掻きむしることでさらに抜け毛が増えることがあります。
・外部寄生虫
ノミやダニが皮膚を刺激し、かゆみや炎症を引き起こします。その結果、局所的な脱毛やかさぶたが見られることがあります。
・細菌や真菌(カビ)の感染
細菌や真菌が皮膚に感染すると、赤みやかさぶたなどとともに脱毛が見られることがあります。特に皮膚糸状菌症と呼ばれる真菌感染症は、他の動物や人にも感染する恐れがあるため、早急な診断と治療が必要となります。
・ホルモンバランスの乱れ
甲状腺機能低下症や副腎皮質機能亢進症(クッシング症候群)などの病気は、ホルモンバランスを崩し、被毛の成長を抑制します。その結果、脱毛や抜け毛の増加が見られることがあります。
【獣医師に相談すべき抜け毛のサインとは?】
抜け毛は多くの場合、自然な現象ですが、いつもと違うと感じる場合には注意が必要です。
普段の換毛と異なるサインを見極めるポイントを確認しておきましょう。
・抜け毛の量やパターンが急に変化した場合
換毛期ではないのに毛がごっそり抜けた、特定の部位だけ脱毛が目立つ、などの場合はストレスや病気が原因である可能性があります。
・皮膚に異常が見られる場合
皮膚に赤み、かゆみ、フケ、かさぶた、湿疹、出血などの異常が現れた場合は要注意です。これらの症状は、外部寄生虫(ノミやダニ)、アレルギー性皮膚炎、細菌感染などの病気が原因で起こっている可能性があります。
・全身症状が伴う場合
抜け毛に加えて、元気がない、食欲が落ちた、体重が減少したなどの全身症状が見られる場合は、ホルモン疾患や内臓の病気が隠れている可能性があります。
【抜け毛対策に役立つ日々のケア方法】
抜け毛を効果的に管理するためには、日常生活の中でのこまめなケアが大切です。以下のポイントを取り入れて、抜け毛を減らしつつ、愛犬の被毛を健康に保ちましょう。
<ブラッシング>
ブラッシングは抜け毛対策の基本です。犬種や毛質に合ったブラシを使い、週に数回を目安に行いましょう。
短毛種にはゴム製のブラシやスリッカーブラシ、長毛種にはピンブラシやコームが適しています。
ブラッシングのコツは、毛並みに沿って優しく行うことです。を入れすぎると皮膚を傷つける恐れがありますので注意してください。
耳の後ろや脇の下など、毛が絡まりやすい部分も忘れずに丁寧にケアしましょう。
<栄養バランスの取れた食事>
被毛の健康は体の内側から整えることも大切です。高品質なタンパク質を含むドッグフードや、オメガ3脂肪酸を含むサプリメントを取り入れることで、被毛を強くし、抜け毛の減少が期待できます。
栄養バランスが崩れると被毛がもろくなり抜け毛が増える原因となりますので、愛犬の年齢や体質に合ったフードを選びましょう。
具体的な食事内容について迷う場合は、獣医師に相談するのもおすすめです。
<室内の清潔維持と運動>
・清潔な環境を保つ
毛が溜まりやすい場所をこまめに掃除し、ノミやダニなどの寄生虫を防ぎましょう。また、空気清浄機を活用することで、空気中のアレルゲンやホコリを減らすことができます。
・適度な運動
運動はストレスの軽減に役立ち、健康な被毛を保つ助けになります。愛犬の年齢や体力に合わせた運動を取り入れましょう。例えば、散歩や室内遊びは楽しみながら運動不足を解消できます。
【まとめ】
愛犬の抜け毛にお悩みの飼い主様は多いですが、正しい知識を身につけることで原因を理解し、適切なケアを行うことができます。
換毛期の抜け毛は自然な現象ですが、抜け毛の量が急激に増えたり、皮膚に異常や全身症状が見られたりする場合には、早めに獣医師に相談することが大切です。
毎日のケアでは、ブラッシングや栄養バランスの取れた食事、清潔な生活環境を心がけることが、抜け毛対策に効果的です。
もし、愛犬の抜け毛や皮膚の状態について少しでも不安がある場合は、ぜひ当院にご相談ください。早期発見と適切なケアで、愛犬が健やかに、そして快適に過ごせるよう、全力でサポートいたします。
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