犬のしこり、放っておいても大丈夫?|良性・悪性の違いと検査の必要性
コラム
愛犬の体にしこりを見つけたとき、不安に感じる飼い主様もいらっしゃるのではないでしょうか。
「すぐに病院に連れて行くべき?それとも、しばらく様子を見てもいいの?」と判断に迷われることもあるかと思います。
しこりが見つかったからといって、すべてが深刻な病気というわけではありません。良性のしこりも多く存在し、すぐに命に関わるものではない場合もあります。
しかし一方で、早期に治療を始めることで、将来的なリスクを減らせるしこりもあります。
特に悪性の腫瘍だった場合、発見が遅れると治療が難しくなることもあるため、注意が必要です。
今回は、しこりを見つけたときの観察のポイントや検査の必要性、受診の判断基準について解説します。
■目次
1.犬のしこりはよくあること?
2.しこりを見つけたときに確認したいポイント
3.どんな検査が行われるの?
4.検査結果からわかること
5.早期発見のために、日頃からできること
6.まとめ
【犬のしこりはよくあること?】
犬にできるしこりは決して珍しいものではありません。特に中高齢期に差し掛かる頃から、その発生頻度は高くなる傾向があります。
しこりの中には「良性」のものも多く、進行がゆるやかで命に関わることが少ないケースもあります。
一方で、「悪性」の可能性があるしこりも存在します。見た目や触った感じだけでは、良性か悪性かを正確に見極めることは難しく、判断を誤ると治療のタイミングを逃してしまうおそれもあります。
そのため、「たぶん大丈夫だろう」と自己判断で様子を見続けてしまうと、万が一悪性だった場合に対応が遅れてしまう可能性もあります。
少しでも気になるしこりを見つけたときには、早めに動物病院で相談されることをおすすめします。
【しこりを見つけたときに確認したいポイント】
しこりに気づいた際は、以下のような点を観察しましょう。
・大きさ(数ミリ〜数センチほど)
・硬さ(やわらかいか、しっかりと硬いか)
・動き(皮膚の下で動くのか、しっかり固定されているのか)
・色の変化(赤くなっている、黒ずんでいる など)
・周囲の毛の状態(毛が抜けている、湿っている など)
さらに、しこりに触れたときに痛がる様子がある場合や、急に大きくなってきた場合、また出血や膿が見られる場合は、特に注意が必要です。
こうした変化が見られたときには、できるだけ早めに動物病院を受診されることをおすすめします。
【どんな検査が行われるの?】
しこりの正体を知るために、いくつかの検査が行われます。
代表的な検査は以下のとおりです。
◆細胞診
しこりに細い針を刺して中の細胞を採取し、顕微鏡で観察する検査です。
比較的簡単に行えるうえ痛みも少ないため、動物病院でよく実施される検査のひとつです。
◆組織生検
しこりの一部をメスで切り取り、より詳しく調べる検査です。
細胞診だけでは診断が難しい場合や確定診断が必要なときに行われます。
◆画像検査(レントゲンや超音波検査など)
しこりの大きさや深さ、周囲の組織との関係を確認するために行います。
また、肺や肝臓などへの転移がないかどうかを調べる目的でも使用されます。
これらの検査は、いずれも短時間で終わることがほとんどです。
多くの場合、鎮静や麻酔を使わずに実施できるため、愛犬への負担も最小限に抑えられます。
検査に対して不安を感じられる飼い主様もいらっしゃるかと思いますが、必要に応じて獣医師がしっかりと説明をしますので、気になる点は遠慮なくご相談ください。
【検査結果からわかること】
検査によって判明するしこりの性質は大きく分けて「良性」と「悪性」に分類されます。
<良性のしこりの例>
・脂肪腫
・表皮嚢胞
・乳頭腫 など
これらのしこりは進行がゆるやかで、命に関わるケースはほとんどありません。
ただし、大きくなって歩行の邪魔になる場合や、日常生活に支障をきたすようになった場合には、手術で取り除くことを検討することもあります。
<悪性のしこりの例>
・肥満細胞腫
・軟部組織肉腫
・扁平上皮癌
・乳腺癌 など
これらは進行が早いものもあり、早期に発見して適切な治療を始めることが非常に重要です。
治療には手術に加えて、放射線治療や抗がん剤による治療が必要になることもあります。
▼肥満細胞腫についてはこちらで解説しています
いずれの場合も、検査結果をもとにして、今後どう治療を進めていくかを獣医師と一緒にじっくり相談することが大切です。
【早期発見のために、日頃からできること】
犬のしこりは、できるだけ早く見つけてあげることがとても大切です。
そのためには、日頃から愛犬の体に触れる習慣をつけておくことがポイントになります。
例えば、お風呂の後やブラッシングの時間などに、愛犬の体全体をやさしく触りながらチェックしてみましょう。
スキンシップをしながら、違和感のあるふくらみや硬さがないかを確認することができます。
特に注意して触っておきたいのは、以下のような部位です。
・首まわり
・わきの下
・足の付け根
・お腹まわり
・背中や腰まわり
これらの場所は皮膚がたるんでいて、よく動く部分であるため、しこりができやすい傾向があります。
また、愛犬がシニア期に入る7歳頃からは、半年〜1年に一度の健康診断を受けておくと安心です。定期的な検査を受けることで、しこりだけでなく、他の体調の変化や病気を早い段階で見つけることにもつながります。
【まとめ】
犬のしこりは、年齢や体質によって比較的よく見られるものであり、必ずしも深刻な病気とは限りません。
「しこり=がん」とすぐに不安になる必要はありませんが、反対に「大丈夫だろう」と判断してしまい、様子を見続けることもリスクにつながる可能性があります。
何よりも大切なのは、しこりに気づいたときに放置せず、早めに動物病院で相談することです。早期に発見し、必要な検査を行うことで、治療の選択肢が広がり、愛犬の健康を守ることにもつながります。
当院では、獣医師が丁寧に検査を行い、その子の状態に合わせて、最適な治療方針を一緒に考えてまいります。
愛犬のしこりに気づかれた際は、どうぞお気軽にご相談ください。
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