精巣捻転
生殖器科
【病態】
精巣捻転とは、精巣と身体をつなぐ精索(血管と精管を含みます)という部分が捻じれてしまう病気です。捻じれが重度の場合には、精巣への血流が遮断され、最終的には精巣が壊死してしまいます。
また、精巣への血流が滞ると、1‐2時間以内であっても精子形成能力に障害を受けてしまいます。一度失われた精巣の機能は元には戻りません。
精巣捻転は犬と猫では比較的稀な病気ですが、潜在精巣と呼ばれる、精巣が腹腔内や鼠径部に留まっている疾患や、精巣腫瘍がある場合などに併発することがあります。
【症状】
捻転している側の精巣は、血液がうっ滞するため、正常な側の精巣よりも大きく腫れることが多いです。そのため、飼い主様が精巣の腫れに気づいて動物病院を訪れるケースが最も多く見られます。
精巣の腫れに加え、精巣をつなぐ精索には多くの血管や神経が通っているため、精索が捻れると激しい痛みを感じます。また、腹痛や痛みによる嘔吐、元気や食欲の低下といった症状も現れることがあります。
精巣の腫れはご自宅でも比較的簡単に気づくことができるので、精巣の大きさに違和感があればすぐに動物病院を受診しましょう。
【診断・治療】
精巣の腫れは精巣捻転以外にも、細菌性の精巣炎や精巣腫瘍(セルトリ細胞腫、精上皮腫、間質細胞腫など)でみられることがあるため、鑑別診断が重要となります。
診断は、精巣周囲の触診や超音波検査を用いて精巣の状態や精巣腫瘤の有無などを確認します。また、針吸引による細胞診検査を行い、精巣の細胞を確認することもあります。さらに、治療のために摘出した精巣を病理組織検査に提出し、精巣腫瘍の確定診断を行います。
もし精巣炎や精巣腫瘍が疑われない場合は、精巣捻転を第一に疑い、治療を進めます。
治療は、子どもを望んでいない場合、去勢も兼ねて精巣を摘出するのが最も確実な方法です。
去勢手術には、オス犬特有の病気の予防や、マウンティングやマーキング行為を抑制するなど、多くのメリットがあります。
一方、将来子どもを望んでいる場合や精巣摘出に抵抗がある方は、摘出せずに手術によって捻転を解除することも可能ですが、再発の可能性があります。
また、精巣捻転が長時間放置され精巣が壊死してしまっている場合には、精巣摘出以外に治療法はありません。
【予後】
精巣捻転は、発症後早いタイミングで動物病院を受診し、精巣摘出術を受ければ再発の心配はなく、予後も非常に良好です。
精巣捻転を予防するには、性成熟を迎える生後6ヶ月ごろまでに去勢手術を受けることが最も重要です。子どもを望んでいない場合は、去勢手術についてお早めにご相談ください。
ご自宅で精巣の腫れに気づいた場合は、様子を見ずにすぐに動物病院を受診してください。