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横隔膜ヘルニア

呼吸器科

【病態】

横隔膜は胸部と腹部を分ける膜で、呼吸を助ける大切な役割を担っています。
この膜が強い衝撃や先天的な異常により破れてしまうと、腹部にある臓器が胸腔内に移動し、肺や心臓を圧迫することがあります。これが「横隔膜ヘルニア」と呼ばれる状態です。

多くの場合、交通事故や高所からの落下など、強い外的な衝撃が原因となります。特に、家の外を自由に出入りする猫は、車に轢かれるリスクが高いので注意が必要です。
また、先天的な横隔膜ヘルニアは非常に稀ですが、遺伝によって発症することもあります。

いずれの場合でも、腹部の臓器が胸腔内に移動することで肺や心臓が圧迫され、呼吸困難やショック状態になる危険性があります。

 

【症状】

横隔膜ヘルニアの症状は、臓器がどれだけ胸腔内に移動しているかによって異なります。代表的な症状としては、以下のものがあります。

呼吸困難や咳
胸腔内に移動した臓器が肺を圧迫するため、息苦しさや頻繁な咳が見られます。

 

吐き気や食欲不振
消化器系の臓器が影響を受けることで、吐き気や食欲の低下が起こることがあります。

 

腹痛
腹部の臓器が移動して圧迫されることで、腹痛を伴うこともあります。触られるのを嫌がり、痛みでじっとしていることが多くなります。

 

元気消失
息苦しさや胸の痛みによって、動くのを嫌がることがあります。普段よりも活動量が減っていると感じた場合、何らかの問題が隠れているかもしれません。

 

ショック状態
肺や心臓が大きく圧迫されると、ショック状態に陥ることがあり、緊急の処置が必要です。呼吸が極端に浅くなり、意識がもうろうとしている場合はすぐに動物病院へ向かってください。

特に、交通事故が原因の場合、他の臓器にも損傷が及ぶことが多く、神経症状や骨折などを併発することもよくあります。

 

【診断方法】

横隔膜ヘルニアの診断には、いくつかの検査が必要です。
まず、飼い主様から事故の有無やご自宅での様子、症状がいつから現れたかをお聞きし、病状の進行具合を確認します。
続いて、身体検査で視診、触診、聴診を行います

次に、より正確な診断を行うために画像検査を行います。
レントゲン検査や心臓のエコー検査を用いて、胸腔内の臓器の位置を確認します。必要に応じてCT検査を追加し、さらに詳細な情報を得ることもあります。

 

【治療方法】

横隔膜ヘルニアは基本的に手術による治療が必要です。手術では、腹部に移動した臓器を元の位置に戻し、破れた横隔膜を縫い合わせて修復します。

<急性の横隔膜ヘルニア>

交通事故などによる急性のヘルニアの場合はできるだけ早く手術を行い、臓器を正しい位置に戻すことが最も重要です。早期に対応することで、臓器へのダメージを最小限に抑えることができます。

 

<慢性の横隔膜ヘルニア>

先天的なヘルニアや長期間にわたって症状が続いている場合、動物がその状態に適応していることもあります。このような場合は、経過観察や内科的な治療を行うことが選択肢の一つとなります
ただし、手術によって症状が改善する見込みがある場合は、手術を行うこともあります。

 

【予後】

急性の横隔膜ヘルニアの場合、早期に治療を行えば良好な回復が期待できることがあります。ただし、交通事故や高所からの落下によって他の臓器にも損傷がある場合は、回復に時間がかかることがあり、手術を行っても予後が厳しい場合もあります。

一方、横隔膜ヘルニアが慢性的に進行している場合や、目立った症状がない場合には、経過観察や内科的な治療で対応できることもあります。
このようなケースでは、治療後に良好な予後が期待できることが多いです。

いずれの場合も、早期の発見と適切な治療が大切ですので、気になる症状があれば早めにご相談ください。

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