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肺葉捻転

呼吸器科

【病態】

「肺葉捻転(はいようねんてん)」とは、肺の一部である「肺葉」が軸を中心にくるりとねじれてしまう病気です。
肺は右と左に分かれており、それぞれが複数の「肺葉」と呼ばれるブロックのような構造を持っていますが、この肺葉が何らかの原因でねじれることで、肺に血液が届かなくなってしまいます。

血液の流れが止まると、その部分の肺の組織は栄養や酸素を受け取れなくなり、やがて壊死(細胞が死んでしまうこと)を起こすことがあります。
さらに、胸の中(胸腔)に液体や血液がたまることで肺が圧迫され、呼吸がしにくくなるなど、深刻な症状を引き起こす場合もあります。
この病気は突然発症することが多く、緊急手術が必要になるケースもあるため、注意が必要です。

肺葉捻転は比較的まれな病気ではありますが、発症しやすい犬種が知られており、特にアフガン・ハウンドやボルゾイといった大型で胸が深い体型の犬(深胸犬)はリスクが高いとされています。
これは、胸の形や肺の構造などが影響していると考えられています。

一方で、猫ではこの病気はさらに発生頻度が低いものの、まったく起こらないわけではありません。
外傷や胸部の腫瘍、肺の疾患が引き金となって発症することがあり、また肺に腫瘍や嚢胞(のうほう:袋状の病変)、あるいは気胸(肺がしぼんでしまう状態)などの基礎疾患があると、肺葉のバランスが崩れ、ねじれが生じやすくなる場合もあります。

▼肺腫瘍についてはこちらで解説しています

▼気胸についてはこちらで解説しています

 

【症状】

肺葉捻転の症状は、咳や呼吸の異常など、一般的な呼吸器の病気とよく似ているため、見分けが難しいことがあります。
しかし、多くの場合は急激に症状が進行し、短時間のうちに命に関わる状態に陥ることもあるため、早めの対応がとても大切です。

特に注意すべき主な症状としては、以下のようなものが挙げられます。

・呼吸が苦しそうで、肩で息をするような様子が見られる(努力性呼吸)
・咳が続く
・元気がなく、横になったまま動こうとしない
・ぐったりしていて立ち上がれない(虚脱)
・舌や歯ぐきの色が紫色や青っぽくなる(チアノーゼ)
・食欲がなくなる、吐いてしまう

これらの症状は突然あらわれることが多く、特に「呼吸が荒くなる」「チアノーゼ」「ぐったりする」といった状態が見られた場合は、迷わずすぐに動物病院へご連絡ください。
症状の変化が非常に速いため、緊急手術が必要となるケースも少なくありません。

 

【診断】

肺葉捻転は外見だけでは判断が難しく、正確な診断には画像検査が欠かせません
まずは動物病院で身体検査や胸の音を聴く「聴診」を行い、呼吸音に異常がないかを確認します。
そのうえで、以下のような検査が行われます。

 

レントゲン検査(X線)
肺の形や位置、影の出方などを調べることで、肺の異常や胸腔内の液体のたまり、ねじれた肺葉の膨らみなどが見つかることがあります。
ただし、肺炎や腫瘍など他の肺の病気と区別がつきにくいこともあるため、さらに詳しい検査が必要になる場合があります。

 

超音波検査(エコー)
胸腔内に液体がたまっていないか、肺の構造が正常かどうかを確認します。
この検査は麻酔を使わずに行えるため、呼吸が苦しい状態でも比較的安全に実施できるのが特長です。

 

CT検査
肺の状態を立体的に詳しく調べることができる検査です。
肺葉のねじれや、血流がどの程度さえぎられているかを正確に把握できるため、手術を検討する際にも非常に役立ちます。

こうした検査の結果と、発症からの経過や症状の様子を総合的に判断し、最終的な診断が行われます。

 

【治療】

肺葉捻転の治療には、外科手術による「肺葉切除術」が基本となります。
ねじれてしまった肺葉は血流が途絶えて壊死していることが多く、そのままにしておくと感染や炎症の原因になるため、基本的には切除が必要となります。

手術を受ける前後や、状態によっては補助的な治療が行われることもあります。
たとえば、輸液(点滴)で体の状態を整えたり、酸素吸入で呼吸を助けたり、必要に応じて鎮静や鎮痛といった薬を使うこともあります。

 

<手術>
手術は全身麻酔をかけて胸を開き、ねじれた肺葉を切除するという外科的な処置です。
発症から時間が経っている場合は、炎症や周囲の組織との癒着が進み、手術のリスクが高まることがあります。そのため、できるだけ早い段階での診断と治療がとても重要です。

また、胸腔内にたまった液体や血液を排出するための「胸腔ドレナージ」という処置が必要になることもあり、これも治療の一環として行われます。

 

<術後の管理>
手術の後は、呼吸や痛みのコントロール、感染予防などを目的とした術後管理がとても大切になります。
具体的には、以下のようなケアが行われます。

酸素を補う酸素療法
痛みを抑える鎮痛管理
抗生剤の投与による感染予防

状態によっては集中管理が必要になることもありますが、体調が安定してくれば、術後おおよそ1週間程度で退院できるケースが多いです。
ただし、全身状態や併発している他の病気がある場合には、もう少し長めの入院や、追加の治療が必要になることもあります。

 

【予後】

手術が無事に終わった後も、愛犬・愛猫が順調に回復していくためには、しばらくの間は細やかな注意と見守りが必要です。
肺への負担を減らすために、激しい運動は控え、なるべく安静に過ごさせてあげましょう。
お散歩などの活動を再開するタイミングは、担当の獣医師とよく相談しながら、無理のないペースで進めていくのが安心です。

また、術後は呼吸状態や日常の様子に変化がないか、毎日気を付けて観察しましょう。
次のようなサインが見られた場合は、術後の合併症の可能性も考えられるため、すぐに動物病院にご相談ください。

・呼吸が荒くなる、または呼吸の回数が増える
・ずっと横になっていて、動こうとしない
・元気や食欲がなかなか戻らない
・咳や吐き気が続く

これらの異変は、術後の合併症や再発の兆候である可能性があります。些細なことでも、気になる様子があれば早めに受診しましょう。

「肺を一部切除してしまって、元通りの生活に戻れるのだろうか?」とご不安に思われる飼い主様も少なくありません。
確かに、肺の一部を失うことは身体にとって大きな変化ではありますが、残された肺が補うように働いてくれることも多く、術後の経過が良好であれば、以前とほとんど変わらない生活に戻ることができるケースも珍しくありません。

肺葉捻転は適切な治療を早期に行えばその後の予後は良好ですが、治療が遅れると命に関わることもあります。
愛犬・愛猫の呼吸に違和感があれば、早めに当院までご相談ください。

 

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