愛犬の耳トラブルに注意!|赤みや腫れの原因と正しい対処法とは?
コラム
愛犬の耳に赤みや腫れを見つけたとき、「何か病気ではないか」と不安になる飼い主様も多いのではないでしょうか。耳の異変は犬にとって強い不快感を伴うだけでなく、放置すると症状が悪化し、健康や生活に大きな影響を与えることがあります。
今回は、犬の耳が赤くなる主な原因や対処法、早期発見のために飼い主様がチェックすべきポイントについて詳しく解説します。
■目次
1.犬の耳が赤くなる主な原因
2.犬種別に注意すべきポイント
3.耳の赤みと一緒にチェックしたい症状
4.いつ病院に連れて行くべき?受診の判断基準
5.獣医師による診断と治療の流れ
6.自宅でできるケアと予防法
7.まとめ
【犬の耳が赤くなる主な原因】
犬の耳のトラブルで最も多いのが外耳炎です。外耳道に炎症が起こり、赤みや腫れ、耳からの悪臭が見られることがあります。
特にゴールデンレトリバーやコッカースパニエルなどの垂れ耳の犬種は、耳の通気性が悪く湿気がこもりやすいため、外耳炎になりやすい傾向があります。
症状が進行すると、耳を引っ掻く、頭を振るなどの行動が見られます。
外耳炎を引き起こす原因として、以下に挙げる感染やアレルギーなどがあります。
・細菌や真菌(カビ)の感染
細菌や真菌(マラセチアなど)の感染も耳が赤くなる原因の一つです。湿度が高い時期や、耳の中が蒸れやすい犬種で多く見られます。
悪臭や分泌物の増加が特徴で、早めに治療しないと重症化する恐れがあります。
・アレルギー
食物アレルギーや環境アレルギー(花粉、ハウスダストなど)が原因で耳に炎症が起こることがあります。
アレルギーによる耳のトラブルは痒みを伴い、犬が耳を頻繁に掻いたり、床や壁に擦り付けたりして症状が悪化することがあります。
・外部寄生虫(耳ダニ)
耳ダニ(ミミヒゼンダニ)は特に子犬や外で過ごす時間が長い犬に多く見られ、耳の中に寄生し、炎症を引き起こします。
耳の中が黒っぽい耳垢で汚れるのが特徴で、犬が耳を頻繁に掻いたり頭を振ったりする場合は、耳ダニの可能性があります。
その他、外傷や耳血腫などでも耳が赤くなります。
・外傷や異物
散歩中に草の種や小さな異物が耳に入り込んだり、他の犬との遊びで耳を傷つけたりすることも炎症の原因になります。この場合、片耳だけに症状が出ることが多いです。
・耳血腫
耳血腫とは、耳介(じかい、耳タブのこと)の軟骨と皮膚の間にできる血だまりのことです。外耳炎に併発することが多く、耳を掻く、頭を振るなどで耳介に刺激が原因となります。耳血腫の場合、耳が腫れることが主な特徴です。
【犬種別に注意すべきポイント】
垂れ耳の犬種(ゴールデンレトリバー、コッカースパニエル、バセットハウンドなど)は、耳の通気性が悪く湿りやすいため、細菌や真菌が繁殖しやすく、炎症を起こすリスクが高いのが特徴です。湿気を防ぐために、定期的に耳をチェックし、掃除を行うことが大切です。
一方、立ち耳の犬種(柴犬、ジャーマンシェパードなど)は、比較的耳の通気性が良いものの、散歩中に草の種や小さな異物が入り込みやすい傾向があります。また、遊んでいる最中に耳を傷つけることもあるため、外傷にも注意が必要です。
【耳の赤みと一緒にチェックしたい症状】
犬の耳に赤みが見られる際は、以下のような他の症状が併せて現れていることがよくあります。
・耳の臭い
耳から湿った臭いや酸っぱいような異臭がする場合、感染などによる外耳炎の可能性があります。
・耳垢の量や色
耳垢が多い、黒っぽい、黄緑色などの場合、耳ダニや感染症の可能性があります。
・耳を掻く、擦り付ける
頻繁に耳を掻いたり、耳を擦り付けたりする行動は強い痒みのサインです。
・頭を振る
耳の中に異物が入っている、不快感がある場合に頭を振ることが多く見られます。
また、頭が片側に傾いている場合、外耳炎が進行して中耳炎や内耳炎となり、神経症状が現れている可能性も考えられます。
【いつ病院に連れて行くべき?受診の判断基準】
愛犬の耳にトラブルがある場合、軽度であれば自宅でのケアで改善することもありますが、症状によっては速やかな対応が必要です。
<即座に受診が必要な危険信号>
以下のような症状が見られる場合は重度の感染症や異物の可能性があるため、早急に動物病院を受診してください。
・耳から膿や血が出ている
・耳が大きく腫れている、または熱を持っている
・頭を振り続ける、片耳を常に下げている
・耳に触れると痛がる、または激しく抵抗する
・耳から強い悪臭がする
<経過観察可能な症状>
以下のような場合は、自宅でケアを行いながら様子を見ることができます。ただし、症状が悪化する場合や改善が見られない場合は動物病院での診察を検討してください。
・耳が少し赤いものの、犬が特に気にしていない場合
・耳垢が少量で異臭がない場合
・頭を時折振る程度で、それ以外の異常が見られない場合
耳のトラブルを放置すると感染が広がる可能性があり、治療が長引いて費用も増えてしまうことがあります。しかし、早めに治療を始めることで症状の悪化を防ぎ、愛犬が快適に過ごせる時間を守ることができます。
もし、耳に異常を感じた場合は早めに動物病院を受診し、適切なケアを受けるようにしましょう。
【獣医師による診断と治療の流れ】
動物病院では以下のような流れで診察と治療が進められます。
<診断>
動物病院では、まず獣医師が問診を行います。耳を掻く頻度や耳から臭いがしないか、分泌物や耳垢が出ていないかなど、飼い主様から詳しくお話を伺います。
次に、耳の外観を観察して、赤みや腫れがないか、耳垢の状態がどうなっているかをチェックします。さらに、耳鏡を使って耳の中をチェックし、異物や炎症、耳ダニの有無を詳しく調べます。
症状によっては、耳垢を顕微鏡で詳しく調べたり、感染症の原因となる細菌や真菌を特定する培養検査を行ったりすることもあります。
また、アレルギーが関係している可能性がある場合には、血液検査や特定の食事を試す方法が提案されることもあります。
<治療>
治療は、愛犬の症状に合わせて進められます。
感染が原因の場合、一般的には専用の洗浄剤で耳を清潔に保ちながら、抗生物質や抗真菌薬といった点耳薬を用いて治療を行います。
また、耳の腫れや痛みが強い場合には、一時的に抗炎症剤を用いる場合があります。
一方、症状が重かったり慢性化していたりする場合は、外科的な治療が必要になることもあります。
軽い症状であれば、治療を始めてから数日から1週間程度で良くなることが多いですが、慢性化している場合は、完治までに数週間以上かかることもあります。
【自宅でできるケアと予防法】
愛犬の耳を健康に保つためには、日常のケアがとても大切です。ただし、ケアの方法を間違えるとかえってトラブルを悪化させてしまうこともあります。
ここでは、自宅で実践できるケアのポイントと予防法について詳しくご説明します。
<耳の清潔を保つ>
耳掃除は、愛犬の耳を健康に保つ基本のケアです。ただし、やりすぎは耳にとって負担になる場合がありますので、健康な耳の場合は週に1〜2回程度を目安に行いましょう。
耳掃除には、必ず犬専用の耳クリーナーを使用してください。コットンやガーゼを使い、耳の表面を優しく拭き取るようにします。このとき、綿棒は耳の奥を傷つける危険があるため、使わないようにしましょう。
耳を強く擦ったり、奥まで掃除しようとしたりすると耳を痛める可能性がありますので、無理せず丁寧に行いましょう。
もし耳が赤くなっている、痛みがある、耳から嫌な臭いがするなどの異変が見られた場合は、耳掃除を中止し、すぐに動物病院に相談してください。
<耳のチェックを習慣に>
日頃から愛犬の耳の様子をチェックすることも、トラブルを早く見つけるために大切です。耳の中をそっと覗いて、赤みや耳垢の量が通常と違っていないか確認してみましょう。
また、耳を軽く触れたときに熱を感じたり、愛犬が触られるのを嫌がったりする場合は異常が疑われます。耳から嫌な臭いがする場合も注意が必要です。
耳に触られることに慣れるためには、小さい頃からスキンシップをしながら耳を触る習慣をつけておくと良いでしょう。
<生活習慣で予防をサポート>
愛犬の耳を健康に保つためには、生活環境を整えることも大切です。
寝床やその周りの環境を清潔に保つことで、細菌や寄生虫の発生を防ぐことができます。特に湿気が多い季節や、換毛期で抜け毛が増える時期は、汚れや毛が溜まりやすいので、普段よりも念入りに掃除をしましょう。
さらに、食事が耳のトラブルに関係している場合もあります。
アレルギー体質の犬では、食事の内容が耳の健康に影響を与えることがありますので、獣医師に相談しながら適切なフードを選ぶようにしましょう。
食事を見直すことで、耳の問題だけでなく全体的な体調改善にもつながることがあります。
<困ったときは無理せず獣医師に相談を>
愛犬の耳に異変を感じたとき、焦って自己判断で対処しようとするのは危険です。特に、市販の薬を使う場合は必ず獣医師に相談してください。間違った使い方や不適切な処置は、症状を悪化させてしまうことがあります。
もし耳のトラブルが改善しない、あるいは悪化しているように感じたら、早めに動物病院を受診しましょう。
【まとめ】
愛犬の耳のトラブルは放っておくと悪化してしまい、生活の質を大きく損なう可能性があります。耳の赤みや腫れ、異臭といったサインを見逃さず、早めに対処することが何より大切です。
自宅での日常的なケアと、獣医師による診断や治療を組み合わせることで、愛犬の耳の健康を守ることができます。大切な愛犬が少しでも快適に過ごせるよう、耳の状態に気を配りながらケアを続けていきましょう。
もし不安なことや気になる症状がある場合は、ぜひ当院にご相談ください。
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