犬が後ろ足を引きずるときに考えられる病気は?|整形外科疾患と神経疾患の違いを解説
コラム
「愛犬が散歩中に片方の後ろ足を引きずっている」
「後ろ足がもつれて、うまく歩けていない」
このような歩き方は、膝や股関節などの整形外科疾患だけでなく、脊髄や神経の異常でも表れます。見た目が似ていても、考えられる病気や緊急度は同じではありません。
今回は、犬が後ろ足を引きずるときに考えられる整形外科疾患と神経疾患の違い、受診の目安を解説します。

■目次
1.犬が後ろ足を引きずる原因|整形外科と神経の違い
2.ご家庭で観察したいポイント
3.後ろ足を引きずるときの受診から治療までの流れ
4.まとめ
【犬が後ろ足を引きずる原因|整形外科と神経の違い】
犬が後ろ足を引きずる原因は、主に整形外科疾患と神経疾患に分けて考えられます。
どちらも歩き方に変化を引き起こしますが、整形外科疾患は骨や関節の異常、神経疾患は神経の障害によって生じます。
そのため、必要な検査や治療、受診の緊急度も異なります。
特に一部の神経疾患は短時間で症状が進行することがあるため、それぞれの特徴を知っておくことが早期受診につながります。
▼犬の後ろ足の引きずりについてはこちらで解説しています
<整形外科疾患で考えられる主な病気>
整形外科疾患は、骨や関節、靭帯、筋肉など「体を支えて動かす組織」に起こる病気です。
ケガや生まれつきの骨格・関節の特徴、加齢に伴う変化、体重による負担などが関係し、後ろ足の引きずりにつながります。
骨や関節、靭帯などに痛みが生じるため、犬は患部への負担を減らそうとして、痛む足に体重をかける時間を短くします。その結果、足を浮かせたり、かばったりする「跛行(はこう)」が見られます。
◆ 膝蓋骨脱臼
膝のお皿にあたる膝蓋骨(しつがいこつ)が本来の位置から外れる病気です。数歩だけ後ろ足を上げ、スキップするように歩くことがあります。
▼膝蓋骨脱臼についてはこちらで解説しています
◆ 前十字靭帯断裂
膝を支える靭帯が傷つき、関節が不安定になる病気です。急に片足へ体重をかけなくなったり、足を横へ投げ出すように座ったりすることがあります。
▼前十字靭帯断裂についてはこちらで解説しています
◆ 股関節形成不全・関節炎
立ち上がりに時間がかかる、腰を左右に振って歩く、階段や散歩を嫌がるなどの変化が見られます。両側に異常があると、後ろ足全体の動きが鈍く見えることもあります。
▼股関節形成不全についてはこちらで解説しています
<神経疾患で考えられる主な病気>
一方、神経疾患は、脳や脊髄、末梢神経など「体の動きや感覚を伝える仕組み」に起こります。
脳や脊髄から足までの間で、動きの指令や感覚がうまく伝わらなくなることがあります。そのため、足に力が入りにくくなったり、足の位置をうまく調整できなくなったりします。
◆ 椎間板ヘルニア
背骨の間にある椎間板の一部が飛び出し、脊髄や神経を圧迫する病気です。背中の痛みから始まり、足先の擦れ、ふらつき、麻痺へ進む場合があります。
症状の程度や進み方によっては、早急な画像検査や手術の検討が必要です。
▼椎間板ヘルニアについてはこちらで解説しています
◆ 変性性脊髄症
脊髄の機能が徐々に低下する病気です。強い痛みが目立たないまま、後ろ足のふらつきや爪の擦れが進むことがあります。
椎間板ヘルニアや関節疾患など、ほかの原因を除外しながら診断します。
【ご家庭で観察したいポイント】
犬が足を引きずっている様子を見ただけでは、病気の診断はできません。整形外科疾患と神経疾患が同時に起きることもあります。そのため、受診の際は歩き方や症状の経過を動物病院へ伝えることが大切です。
以下はご家庭で愛犬を見るときの観点として参考にしてください。
<整形外科疾患が疑われるサイン>
整形外科疾患では、次のような変化が見られることがあります。
✅ 片方の後ろ足を浮かせる
✅ 痛む足を着く時間が短い
✅ ケンケンやスキップのように歩く
✅ 膝や股関節を触ると嫌がる
✅ 立ち上がりや段差を避ける
<神経疾患が疑われるサイン>
神経疾患を疑う手がかりは、次のとおりです。
✅ 後ろ足がふらつく、もつれる
✅ 足先を擦り、爪の甲が削れる
✅ 足の甲を床に着けてしまう
✅ 両方の後ろ足に力が入りにくい
✅ おしっこの出方が変わる
<早急な受診が必要な症状>
特に神経疾患では、脊髄の圧迫や損傷が進むと、麻痺が重くなったり、排尿が難しくなったりする場合があります。
治療を始める時期がその後の回復に影響する可能性もあるため、早急な対応が必要です。
次の症状がある場合は、夜間や休診日であっても対応可能な動物病院へ連絡してください。
✅ 数時間で歩き方が悪化した
✅ 自力で立てない、歩けない
✅ 両方の後ろ足を引きずっている
✅ 首・背中・腰に強い痛みがある
✅ 自力でおしっこを出せない、または漏れる
✅ 落下や交通事故の後に歩けなくなった
また、高所からの落下や交通事故によるケガでは、骨折や脱臼などの整形外科的な異常だけでなく、胸部・腹部の臓器損傷や体内出血が起きている可能性もあります。
外見からは分からない異常もあるため、歩ける場合でも速やかに受診しましょう。
【後ろ足を引きずるときの受診から治療までの流れ】
後ろ足の引きずりが続く、または繰り返す場合は、様子見を続けるのではなく動物病院へご相談ください。
まずはできるだけ安静に過ごせる環境を整え、受診の準備を進めましょう。
受診までの間は次の点に注意してください。
・散歩を中止し、階段や滑る床を避ける
・歩き方を前後・左右から短い動画で撮る
・症状が始まった時刻と変化を記録する
・移動時は胸と腰を支え、背中を大きく曲げない
・自力で立てない場合は、毛布や板状のものに乗せて運ぶ
確認のために無理に何度も歩かせると、痛みや麻痺が悪化する恐れがあります。
また、足先を強くつねって反応を確かめることや、人間用の鎮痛薬を使用することは避けてください。痛みの感覚や反射は、動物病院で確認します。
<動物病院で行う診察・検査と治療>
「後ろ足を引きずっているなら、整形外科を受診すべき?」と迷う飼い主様もいらっしゃるでしょう。しかし、歩き方を見ただけでは、骨や関節の病気なのか、神経の病気なのかを判断することは困難です。
そのため、整形外科と神経の両面から状態を確認できる動物病院へ相談しましょう。必要に応じて、詳しい画像検査や手術を行う施設と連携する場合もあります。
診察の進め方は症状によって異なりますが、一例として次のような確認や検査を行います。
1.歩き方や姿勢を観察する(歩行検査)
2.骨・関節・筋肉の痛みや不安定さを調べる(整形外科的検査)
3.足の位置を認識する反応や脊髄反射を調べる(神経学的検査)
4.必要に応じてレントゲン・血液・CT・MRI検査を検討する
レントゲン検査は、骨折や脱臼、関節の変形などの確認に役立ちますが、脊髄そのものを詳しく調べることには限界があります。
例えば、椎間板ヘルニアが疑われる場合は、まず神経学的検査によって、異常が起きている部位や症状の重さを推定します。その結果をもとに、脊髄の圧迫部位や状態を確認するため、CT検査やMRI検査などの必要性を判断します。
治療方法は、原因や症状の程度によって異なります。安静や投薬などの内科治療から、骨・関節・神経に対する手術まで、年齢や全身状態、検査結果などを踏まえて適切な治療法を選択します。
治療後には、筋力や関節の動きを保ち、歩行機能の回復を支えるためにリハビリを取り入れる場合があります。リハビリを始める時期や内容は病気によって異なるため、獣医師の指示に沿って進めることが大切です。
<乙訓どうぶつ病院の診療体制|検査から手術・リハビリまで>
乙訓どうぶつ病院では、整形外科を担当する外部の獣医師とも連携し、総合診療の視点をもって後ろ足の引きずりについてご相談をお受けしています。
膝蓋骨脱臼や前十字靭帯断裂、骨折、椎間板ヘルニアなどの手術にも対応し、術前検査から術後のリハビリまで継続してサポートいたします。
▼整形外科診療についてはこちら
整形外科
▼神経科診療についてはこちら
脳神経科
▼整形外科手術・神経外科手術についてはこちら
手術
【まとめ】
犬が後ろ足を引きずる原因には、骨や関節の痛みだけでなく、脊髄や神経の異常もあります。
後ろ足の引きずりには、整形外科と神経の両方の視点をもって状態を確認することが大切です。
当院では、診察や検査を通して原因を見極め、それぞれの状態に応じた治療方針を飼い主様と一緒に検討します。
後ろ足を引きずりながら歩くことは、痛む足をかばうだけでなく、ほかの足や腰へ負担をかけることにもつながります。
愛犬が無理を重ねる前に、歩き方の小さな変化についてもご相談ください。
■関連する記事はこちらです
飼い主さんと動物たちのえがおのために
京都府長岡京市「乙訓どうぶつ病院」
~乙訓地域(長岡京市、向日市、大山崎町)、大原野、伏見、久御山、島本町~
診療案内はこちら










