肩関節脱臼
整形外科
【病態】
肩関節脱臼とは、肩甲骨と上腕骨をつなぐ関節が本来の位置から外れてしまう状態を指します。
肩関節は体の中でも特に可動域が広いため、一度脱臼が起こると動かしづらさや痛みが顕著に現れるのが特徴です。
また、関節を支える靭帯や筋肉が損傷してしまうと、関節の安定性が低下して脱臼を起こしやすくなります(再脱臼)。
<完全脱臼と亜脱臼>
肩関節脱臼には、関節面が完全に外れてしまう「完全脱臼」と、部分的にずれる「亜脱臼」があります。
完全脱臼では関節がまったく噛み合わず、自力での回復は困難です。早期の治療が必要になります。
<犬や猫に多い脱臼>
犬や猫では転倒や落下、交通事故といった強い衝撃による「外傷性脱臼」が多く見られます。
特に小型犬や猫では、ソファやベッドからの落下がきっかけとなることも少なくありません。先天的に関節のくぼみ(関節窩)が浅い犬や猫は発症リスクが高い傾向にあります。
【主な症状】
肩関節脱臼を起こすと、犬や猫は痛みや違和感のために次のような様子が見られます。
・前足を上げて歩く、あるいは三本足で歩こうとする
・肩を触ると痛がる、抱っこを嫌がったり逃げようとしたりする
・安静にしていても肩を動かすと強く痛がる
・肩の位置がずれて見え、左右の高さが違う
・「カクッ」「コキッ」といった異音がする
症状が慢性化すると、肩まわりの筋肉が衰えたり、関節が不安定なまま癖になったりすることがあります。
そうなると、サポーターなどでの固定が難しくなり、日常生活に支障が出ることもあります。
転落や外傷のあとにこれらの変化が見られた場合は、早めに動物病院へご相談ください。
【診断】
診察では、まず視診や触診によって肩関節の位置、動かし方の制限、痛みの反応などを確認します。
外見から変形が分かる場合もありますが、軽度の亜脱臼では見た目だけで判断するのは簡単ではありません。
確定診断にはレントゲン検査を行い、関節面のずれや脱臼の方向(内側・外側など)を特定します。場合によってはCT検査で骨折や靭帯損傷の有無を詳しく調べます。
乙訓どうぶつ病院では、整形外科専門医による詳細な関節検査を月1回実施しており、脱臼の程度や関節周囲の損傷まで丁寧に評価していきます。
【治療法】
治療は脱臼の程度や原因、関節の損傷具合によって異なります。
◆ 整復
軽度の場合は「整復」と呼ばれる処置で、関節を元の位置に戻します。
整復後は「サポーター」や「バンテージ(包帯)」を使って関節を安定させ、一定期間安静に過ごすことで回復を目指します。
この期間は、関節が再び外れないよう無理な運動を避けることが重要です。
◆ 手術
靭帯の損傷が重度の場合や 、整復後に再脱臼を繰り返す場合には「手術」を検討します。
関節包(かんせつほう)を縫い合わせて補強したり、人工靭帯を使って安定性を取り戻したりする方法があります。
術後はリハビリテーションや温熱療法、理学療法を組み合わせ、筋力や関節の動きを徐々に取り戻せると良いでしょう。
▼当院の手術についての詳細はこちらから
<家庭でのケアと再発予防>
治療後の生活では、環境や過ごし方を見直して、早期の回復と再脱臼を防ぎます。
対策として以下のようなことができると良いでしょう。
・サポーターの継続利用
・段差の少ない環境を整える
・フローリングに滑り止めマットを敷く
・過度なジャンプや急な方向転換をさせないようにする
・リハビリやストレッチを行う(獣医師のアドバイスのもと実施してください)
また、体重の増加は肩関節に負担をかけるため、フードの見直しや運動量の調整で適正体重の維持を心がけましょう。
当院では、外科的な整復や再建手術にも対応しており、整形外科専門医による治療と、一頭一頭に合ったリハビリを通じて、再発の予防まで寄り添ったサポートを行っています。安心してご相談ください。
【予後】
早期に整復や手術を行えば、日常生活への復帰が十分に期待できます。
治療が遅れた場合や自己判断で放置してしまうと、関節の変形や慢性的な痛みが残ることもあるため注意しましょう。
多くの症例では、術後数か月で歩行が安定し、元気に動き回れるようになります。
再脱臼を防ぐためにも、サポーターの装着や環境管理、定期的な診察を続けることが大切です。
乙訓どうぶつ病院では、整形外科専門医によるフォローアップ体制を整えており、回復後も安心して生活を続けられるようサポートしています。
肩関節脱臼の疑いがあるときは、早めにご相談ください。
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