肩関節不安定症
整形外科
【病態】
肩関節不安定症は、肩関節を支える軟部組織の損傷やゆるみによって、肩の関節が安定しづらくなる病気です。完全に関節が外れる脱臼とは異なり、日常の動きの中で小さなズレが繰り返され、歩くと痛みや違和感が出る場合があります。
犬の肩関節は、前足を前後に動かすための重要な関節です。歩く、走る、ジャンプする、段差を上り下りするなど、日常のさまざまな動きで肩関節には負荷がかかります。
肩まわりに負担が重なると、関節そのものだけでなく周囲の筋肉や組織にも炎症が起こります。
その結果、前足を出すと痛みで歩き方に異常(跛行)が出たり、運動後に足を気にしたりすることがあります。
肩関節不安定症が起こる原因としては、激しい運動、外傷や転倒、急な方向転換、ジャンプの着地などが挙げられます。
また、先天的な関節のゆるさや、加齢に伴う筋力低下も関係します。
【症状】
飼い主様が気づきやすい肩関節の異常としては、まず「肩まわりを触られるのを嫌がる」「前足を伸ばす動きを嫌がる」といった変化が挙げられます。
肩関節不安定症の症状は、常に同じように出るとは限りません。痛みがある日と落ち着いて見える日があり、飼い主様からすると「治った」と感じられることもあるでしょう。
ただし、一時的に歩き方が戻っても、肩関節への負担がなくなったとは限りません。
一時的であっても、以下のような変化を見過ごさないようにしましょう。
・抱き上げたときに体をこわばらせる
・散歩に行きたがらない、遊ぶ時間が短くなる
・以前より休む時間が増える
・前足をかばうように歩く
・歩いているときに頭が上下する
・片方の前足だけ歩幅が短い
・散歩の途中で立ち止まる
・走った後に足を気にする
・段差や階段、ソファへの上り下りを避ける
・寝起きや歩き始めにぎこちなさが出る
ただし、これらの症状は肩関節不安定症だけでなく、爪や肉球のケガ、肘関節の病気、頸部の痛みなどでも共通する症状のため、早めに動物病院で正しい原因を確認することをおすすめします。
【診断】
肩関節不安定症の診察においては、歩いている様子、触診時の痛み、関節の動き、筋肉量の左右差などを総合的に見て判断することが大切です。
診断は基本的に以下のような流れで進めます。
・問診:普段の歩き方や痛みが出るタイミング、過去の外傷や激しい運動歴をヒアリング
・歩行検査:立ち姿、歩幅、頭の上下運動、足の着き方を評価
・触診:肩関節の動き、ゆるみ、痛み、筋肉の左右差を確認
・レントゲン検査:骨折、脱臼、関節の変形などを確認
・必要に応じた追加検査:関節内の状態や周囲組織の損傷を詳しく評価
【治療】
肩関節不安定症の治療は、痛みの程度、関節の不安定さ、生活への影響、活動量などを踏まえて検討します。
<保存療法>
軽度の場合は、まず保存療法により痛みの軽減と再発予防を目指します。
保存療法では、運動制限、鎮痛薬や抗炎症薬による痛みの管理、体重管理、肩まわりの筋力を支えるリハビリ(理学療法)などを組み合わせます。
痛みが落ち着いた後も、急なダッシュやジャンプ、激しい遊びをすぐに再開すると、再び症状が出る恐れがあります。「元気そうだから」といって自己判断せず、獣医師の指示に従って運動量を調整していきましょう。
<外科療法(手術)>
一方で、以下のような場合には外科療法として手術も検討されます。
・保存療法で十分な改善が見られない
・痛みや歩行異常を繰り返す
・肩関節の不安定さが強い
・関節内の損傷が激しい
今後の肩関節が与える影響や生活の質を考えたうえで、必要なタイミングで実施します。
◆ 関節鏡視下手術について
肩関節不安定症では、病変の把握や治療方針の判断に関節鏡を用いる場合があります。
関節鏡視下手術とは、関節の中に細い内視鏡を入れ、内部を拡大して確認しながら行う手術です。従来のように関節を大きく開く(切開する)方法と比べて、体への負担を抑えられる点が特徴です。
関節鏡を用いることで、関節内の炎症、軟骨、靭帯、関節包などの状態を直接確認できます。
当院では、現在だけでなく将来的な動物たちの痛みにも配慮し治療計画を立てていきます。
また、実績豊富な整形外科の外部専門医による診療体制のもと、負担の少ない「関節鏡」を用いた検査・手術にも対応しています。
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【予後】
肩関節不安定症は、軽度の段階で治療を始めることで、痛みの慢性化を防ぎやすくなります。運動制限やリハビリを適切に行うことで、日常生活の改善を目指せるケースもあります。
一方で、発見が遅れると、肩関節の不安定さによって炎症や痛みが長引く恐れがあります。痛みのある箇所をかばい続けることで、反対側の前足や首、背中に負担が広がるリスクも高まります。
また、痛みから運動を嫌がるようになり「運動量の低下→筋力低下・体重増加→さらなる関節負担の増大」といった悪循環につながることがあります。このような悪循環に入らないよう、早めに対処しましょう。
◆ 手術後の過ごし方
手術後は、一定期間の安静や運動制限が必要です。
回復の段階に合わせて散歩量や運動内容を調整していきます。
また、ご家庭内の環境や過ごし方として、滑りやすい床、急なジャンプ、段差の上り下りが負担になっていないかを見直しましょう。
筋力回復や再発予防のためには、獣医師の指示に沿ったリハビリも大切です。
ただし、自己判断で運動量を増やすと、回復途中の肩関節に負担がかかることがあります。歩き方が良くなってきたように見えても、無理に動かさず、段階的に日常生活へ戻していきましょう。
当院は乙訓・長岡京エリアに根付いた動物病院でありながら、遠方の二次診療施設へ行かなくても、近場で高度な整形外科治療を受けられるようにしています。愛犬の歩き方や前足の使い方に不安がある場合は、ぜひ一度当院へご相談ください。元気に運動できる日を目指して、親身になって回復までサポートいたします。
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