埋伏歯
歯科
【病態】
埋伏歯(まいふくし)とは、本来であれば歯ぐきから出てくるはずの歯が、歯ぐきやあごの骨の中に埋まったままになっている状態をいいます。
特に犬では、乳歯から永久歯へ生え変わる時期に見つかることが多く、小型犬では歯の生えるスペースやあごの大きさの関係から注意が必要です。
埋伏歯は歯ぐきや骨の中に隠れているので、歯科レントゲン検査で確認する必要があります。気づかずに放置することがないようにしましょう。
<犬の埋伏歯で注意したい「含歯性嚢胞」>
埋伏歯で問題になりやすい病気のひとつに、含歯性嚢胞(がんしせいのうほう)があります。これは、埋まった歯の周囲に袋状の病変ができる状態です。
含歯性嚢胞が大きくなると、あごの骨を少しずつ溶かし、周囲の歯や骨に影響を及ぼします。初期には痛みや腫れが目立たず、食欲も変わらないことがあるため、飼い主様が異変に気づきにくい点が特徴です。
そのため「歯が生えていないだけ」「生活に支障がなさそう」と様子を見るのではなく、永久歯の本数や位置を一度確認しておくことが大切です。
【症状】
埋伏歯そのものは、強い痛みや食欲低下などの目立った症状がないまま経過するケースがあります。また、含歯性嚢胞ができていても、初期には見た目の変化があらわれるとは限りません。愛犬・愛猫のお口の中は小まめに観察するようにしましょう。
このような見え方をしたら、埋伏歯の可能性があります。
・永久歯が生える時期を過ぎても一部の歯が見えてこない
・左右で歯の本数が違う
・乳歯が残っている
・歯並びが乱れている
また、埋伏歯の影響で「口の中を触られるのを嫌がる」「硬いものを噛みたがらない」「片側だけで噛むようになる」という変化もあらわれることがあります。
あわせて、口臭やよだれ、歯ぐきの腫れがあるときは、埋伏歯だけでなく歯周病や感染など他の口腔トラブルの影響も考えられます。
<受診のタイミング>
犬の永久歯は、生後6〜7か月頃までに生えそろってくることが多いため、この時期を過ぎても見えてこない歯がある場合は、一度動物病院での確認をおすすめします。
この時期は、子犬や子猫の避妊・去勢手術を検討するタイミングとも重なります。同時にご相談いただければ、飼い主様と動物たち双方にとって、通院や治療の負担の軽減にもつながります。
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【診断】
診察では、まず口腔内を確認し、永久歯の本数、乳歯遺残の有無、左右差、噛み合わせ、歯ぐきのふくらみなどを見ていきます。あわせて、食べ方の変化や口を触られたときの反応も確認します。
ただし、埋伏歯は歯ぐきやあごの骨の中にあるため、口の中を見ただけでは正確な位置や向きまで分からないことがあります。
そこで重要になるのが歯科レントゲン検査です。
歯科レントゲン検査では、埋伏歯がどこにあるのか、どの向きで埋まっているのか、骨の中でどのくらい深い位置にあるのかを確認できます。また、歯の周囲に含歯性嚢胞ができていないか、あごの骨が溶けていないか、周囲の歯に影響が出ていないかも評価します。
手術が必要になる場合には、どの範囲を処置する必要があるかを事前に把握するためにも、レントゲン検査は大切な判断材料になります。
【治療】
埋伏歯が見つかっても、すべてのケースで同じ治療になるわけではありません。
歯の位置、周囲の骨の状態、含歯性嚢胞の有無、今後トラブルにつながる可能性などを総合的に見て方針を決定します。
たとえば、成長スピードなどの個体差によって、経過観察をする場合もあります。
一方で、早期に処置を行いたいのは、以下のようなケースです。
・埋伏歯の周囲に含歯性嚢胞がある
・あごの骨が溶け始めている
・周囲の歯に影響している
・痛みや腫れ、感染が疑われる
主な治療は、埋伏歯の抜歯です。歯ぐきや骨の中に埋まっている歯を、外科的に取り除きます。
含歯性嚢胞がある場合には、袋状の組織もあわせて取り除き、再発や骨への影響を抑えることを目指します。
また、周囲に歯石や歯周病がある場合には、必要に応じて歯石除去や炎症部位の処置を検討します。埋伏歯だけを見るのではなく、口腔内全体の状態を確認することが、術後のトラブル予防にもつながります。
当院は、日々のお口のケアから口腔外科手術まで広く対応しています。歯科処置は多くの場合、麻酔下で行います。これは動物たちを痛みや恐怖心から守り、根本からの治療を目指すために必要となります。治療方針の説明からフォローまで丁寧に行いますので、気になることがあれば遠慮なくお聞きください。
【予後】
抜歯後は、傷口の治り具合を確認しながら、痛み止めや必要に応じて抗菌薬を使用し、回復をサポートします。
ご自宅では、硬いおやつや噛むおもちゃを避け、出血・腫れ・食欲低下などが続く場合は早めに動物病院へ相談しましょう。
<埋伏歯を放置するとどうなる?>
埋伏歯は、早い段階で見つけて処置できれば、小さな範囲の手術で済むことが多く、術後の口腔内管理にもつなげやすいでしょう。
一方で、「痛がっていない」ことを理由に埋伏歯を放置すると、含歯性嚢胞のリスクが高まります。これが悪化すると、あごの骨が溶け、処置範囲が広がる恐れがあります。
口腔内の違和感から、食べ方や噛み方に変化が出ることもあり、生活の質(QOL)にまで影響を及ぼします。
子犬・子猫時期の定期的な健康チェックや歯科検診で、埋伏歯がないかを確認し、将来的な歯科トラブルの予防につなげるようにしましょう。
当院では、長岡京市周辺にお住まいの飼い主様を中心に、犬や猫の歯科・口腔外科診療を数多く行ってきました。埋伏歯や含歯性嚢胞の診療はもちろん、歯科検診やご自宅でのデンタルケアについてもご相談いただけます。
日々のケアと定期的なチェックを通じて、口腔トラブルの早期発見・予防につなげ、愛犬・愛猫の健やかな毎日を一緒に守っていきましょう。
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